講演情報

[O7-4]羊水染色体検査で判明した性染色体異常症例から考える遺伝カウンセリングの重要性

鶴岡 佑斗, 宮 美智子, 佐村 修, 岡本 愛光, 伊藤 由紀, 高橋 健, 井上 桃子, 長谷川 瑛洋, 永江 世佳, 大久保 春奈, 長尾 健, 毛利 心, 江島 瑠李子, 松本 夏生 (慈恵医科大学附属病院 産婦人科)
【緒言】出生前遺伝学検査において性染色体異常を認めた場合, クライエントがそれを予期していないことが多くカウンセリングに苦慮することが多い. 今回, 当院における羊水染色体検査で判明した性染色体異常症例に対するカウンセリング, 分娩転帰について検討を行い, 今後の遺伝カウンセリングの一助とする.【方法】2012年4月から2022年3月までの10年間に当院で羊水染色体検査を受けた妊婦を対象とし, 胎児性染色体異常の有無, 母体背景, 受検理由, 遺伝カウンセリングの実施状況, 分娩転帰に関し, 後方視的に検討した.【結果】当院で行った羊水染色体検査1446例のうち染色体異常症例は140例であった. そのうち性染色体異常症例は15例であり, 分娩転帰が判明している13例を検討対象とした.受検時の母体年齢の中央値は33歳 (24-41歳) であった. 受検理由は, 非侵襲的出生前遺伝学的検査 (血清マーカー検査, NIPT) 陽性 6例, 胎児の形態異常 (cystic hygroma, 小脳低形成) 5例, 患者希望 2例であった. 結果は45,X 5例, 45,X と正常核型のモザイク 3例, 47,XXX 1例, 47,XXY 2例, 47,XYY 2例であった. 非侵襲的出生前遺伝学的検査陽性のため当院に紹介された症例は全例で検査前に遺伝カウンセリングが行われていなかったが, 当院で羊水染色体検査前に遺伝カウンセリングを行った. 胎児cystic hygromaを認めた5例のうち4例で妊娠中断が選択され, 1例は胎児死亡を認めた. 偶発的に性染色体異常が判明した8例のうち6例は妊娠継続を選択され生児を得た. 2例は妊娠中断が選択された. 【考察】 偶発的に性染色体異常が判明した症例では最終的に妊娠継続を選択する傾向にあった. 非侵襲的出生前遺伝学的検査をきっかけに性染色体異常が判明した症例では, クライエントの理解を得るためより詳細な遺伝カウンセリングを要した. 検査前から偶発的所見の可能性を含む遺伝カウンセリングを行うことの重要性が再認識された.