講演情報

[O8-1]初診時問診票情報に基づくスクリーニングからの遺伝性腫瘍診療とその課題

市川 眞琴1, 高磯 伸枝1, 吉村 章代3, 井本 逸勢2 (1.愛知県がんセンター リスク評価室, 2.愛知がんセンター 研究所, 3.愛知県がんセンター 乳腺科)
【背景】当院では遺伝性腫瘍症例の抽出を目的に、2019年4月から初診時問診票スクリーニングを開始した。遺伝性腫瘍が疑われる場合、担当医に遺伝性腫瘍を疑う理由や遺伝カウンセリング(GC)の提案を行い、患者へのGC提案は治療状況などを把握している主治医から行う。2022年3月までで対象となった14,321人のうち155人にGCの提案を行った。来談に至った2例を報告する。【症例1】35歳女性。29歳で下行結腸癌、33歳で膵尾部NETの既往歴があり、当院へは異形子宮内膜増殖症で来院、子宮内膜癌の診断となった。家族歴は、妹に子宮体癌(27歳)、父に大腸癌(30代)、父方祖父に大腸・胃・膵癌(50代)。Lynch症候群が疑われ担当医にGCを提案、来談に至った。遺伝学的検査(GT)においてCLは、抗がん剤治療を控えており治療優先を希望、受検は終了後に改めて考えたいとの意向を示した。治療終了後にGTへの考えなど心情の変化を確認する予定である。【症例2】56歳女性。他院で左乳がんと診断され、当院での治療を希望し来院。初診時問診票で、父方のおじ2人に膵がん(40代)の家族歴を認めた。遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)を疑い担当医にGCを提案し、術後に来談した。HBOCの情報提供において、CLはがん診断・入院・手術など病気に関するイベントが続く中、更に遺伝の可能性が伝えられ、驚きと混乱が見られたことから、情報提供より傾聴を優先した。【考察】初診時問診票のスクリーニングは、全がん患者に早いタイミングでGCの機会を提供できる可能性がある。早期介入で患者に意思決定の時間的猶予もできることを期待しているが、遺伝性の可能性を担当医から告げられるタイミングによっては混乱を招くケースもあった。個々の患者さんに適切な情報提供が行えるよう、担当医とコミュニケーションを取りながら、長期的な目線で支援していきたい。