講演情報

[O8-3]肝門部領域胆管癌のがんゲノムプロファイリング検査を契機に血縁者の遺伝性乳癌卵巣癌症候群の発症前診断に繋がった症例

松谷 サディア1, 多田 陽香1, 大道 納菜子1, 池川 敦子2, 川下 理日人1,3, 田村 和朗1,2, 中川 倫子4, 西郷 和真1,2, 松本 佳也4 (1.近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻 遺伝カウンセラー養成課程, 2.近畿大学病院 遺伝子診療部, 3.近畿大学 理工学部 エネルギー物質学科, 4.市立岸和田市民病院 産婦人科)
【背景】遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)では、BRCA1/2の生殖細胞系列の病的バリアントにより、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌を高率に発症するが、近年では胃癌、食道癌、胆道癌の発症リスクも高いとされている。今回、肝門部領域胆管癌のがんゲノムプロファイリング検査を契機に、血縁者のHBOCが明らかとなった症例を報告する。 
【症例】発端者は67歳女性で肝門部領域胆管癌と診断された。43歳でS状結腸癌の既往歴がある。家族歴として父に前立線癌、父方伯父に膵臓癌がある。 
発端者はがんゲノムプロファイリング検査の二次的所見(BRCA2の病的バリアント)により、遺伝カウンセリングを勧められて来談された。ご本人は現在がんの治療中であるため、ご自身の健康管理に活かすためというよりは、子どもたちのためにとの思いから、生殖細胞系列のシングルサイト確認検査を受検された。結果、HBOCと診断され、ご本人から実子を含めat risk者にお伝えいただき、希望があれば来談していただくこととした。 
後日、実子2人(長男42歳、長女37歳)が同席で来談され、シングルサイト検査の結果、2人ともHBOCと発症前診断された。関連癌の発症リスク、サーベイランスやリスク低減手術について情報提供を行った。2人は発端者の病歴から、胆管癌や大腸癌など主な関連癌ではない臓器のサーベイランスについても質問をされていた。また、2人ともに未成年の子どもが複数いるため、具体的な情報の伝え方や適切な時期について相談をされていた。 
【考察】乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌以外のHBOCハイリスク腫瘍についても、必要に応じて各診療科との協力体制を作っていくことが重要である。また、HBOCのように成人発症の遺伝性疾患においては、親から子に適切な時期と内容で情報を伝える必要があり、遺伝カウンセリングへの来談も一つの重要な手段となる。