講演情報

[O8-4]リスク低減乳房切除術・リスク低減卵管卵巣摘出術の意思決定における遺伝カウンセリングの役割

秋山 奈々1, 張 香理1, 西岡 琴江2, 佐藤 綾花2, 森園 亜里紗2, 谷川 道洋3, 曾根 献文4, 森 繭代4, 田辺 真彦2, 織田 克利1 (1.東京大学医学部附属病院 ゲノム診療部, 2.東京大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科, 3.がん・感染症センター 東京都立駒込病院 婦人科, 4.東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科/女性外科)
【諸言】 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の乳癌・卵巣癌既発症者に対するリスク低減手術(乳房切除術:RRM、卵管卵巣摘出術:RRSO)が2020年4月より保険適用となったが、同手術においては、身体的影響に加え、心理的社会的影響に対する検討も不可欠となる。本研究では、リスク低減手術前の意思決定プロセスにおいて遺伝カウンセリング(GC)の場を加えることの意義について検討した。【対象・方法】2020/4~2022/5までにRRM/RRSOを希望し、各診療科における保険適用のGCに加え、ゲノム診療部での自費のGCを実施したHBOC既発症者12例を対象とした。クライアントが自ら作成したRRM/RRSOに対するメリット・デメリット表(リスク低減手術を受けることに対するメリット・デメリットを記載するシート)をもとに、GC記録を後方視的に検討した。【結果】12例の希望術式の内訳は、RRM 4例、RRSO 6例、RRM・RRSO 2例であった。乳癌11例(男性1例を含む)、乳癌・卵巣癌の重複1例であった。BRCA1, BRCA2病的バリアントは各6例で陽性であった。自費GCの対応時間は30分1例、60分8例、90分3例であった。自費GCの補足点は、主にリスク低減手術を受けるデメリットの明確化であり、デメリット・懸念点として「手術の痛みや合併症(7例)」、「ライフスタイルに合わせた手術のタイミング(5例)」、「整容面の不安(RRM: 5例、うち男性1例)」が挙げられた。自費GC後は各診療科にて保険診療の再診時に疑問点の解消、最終の意思確認を行い、最終的に全例でリスク低減手術が選択された。【考察】 リスク低減手術では、別途GCの機会を設定することで、心理的社会的要因にも十分な時間を取ることができ、価値観や不安の言語化、整理に寄与することが示唆された。現状は遺伝学的検査前後のGCのみが保険適用内となっているが、リスク低減手術における意思決定のプロセスにおいて、検査後の継続的なGCが重要といえる