講演情報
[O8-5]大阪大学病院 遺伝子診療部における発症前診断の現状 ~この10年の神経筋疾患症例において~
○米井 歩1, 高橋 正紀1,2,6, 矢野 英隆1,2,3, 中前 純治1,4, 佐藤 友紀1, 安達 容枝1, 永井 真理子1, 橋本 香映1,5, 酒井 規夫1,6,7, 望月 秀樹1,2 (1.大阪大学医学部附属病院 遺伝子診療部, 2.大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学, 3.医療法人 協和会 千里中央病院, 4.大阪大学医学部附属病院 保健医療福祉ネットワーク部, 5.大阪大学大学院医学系研究科 産科婦人科学, 6.大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻, 7.大阪大学大学院医学系研究科 小児科学)
【背景】
家系の中に遺伝性疾患を有するクライエント(CL)は個々の背景に応じて自身の発症の可能性を知りたいと遺伝子診療部を訪れる。しかし、実際に発症前診断を受ける/受けないことを明確に意思決定するCLは一部であり、来談が途切れその後の経過が不明となる症例がある。とくに遺伝性神経筋疾患は未だ治療法や対処法がないものが多く、その発症前診断の進め方においても明確な指針がないのが現状である。そこで、当院における神経筋疾患の発症前診断を後方視的に検討し現状を明らかにすることとした。
【方法】
2012~2021年の10年間に来談した症例のうち神経筋疾患領域を抽出し、そのうち発症前診断を目的とした症例を後方視的に検討した。
【結果】
10年間の来談症例のうち神経筋疾患領域は221例、そのうち発症前診断目的の症例は52例であった。疾患内訳は脊髄小脳変性症が最多で22例、ハンチントン病14例、筋強直性ジストロフィー12例と続いた。発端者の診断が遺伝学的に確定している症例は38例、臨床診断のみは8例、診断不確実例は6例であった。実際に発症前診断を受けたのは8例、継続中5例、受けなかったのは6例で、中断後の経過が不明な症例は33例であった。また上記3疾患での疾患ごとの発症前診断の実施率は脊髄小脳変性症が最も高かった。
【考察】
発症前診断においては発端者の遺伝学的診断が確定している必要がある。遺伝学的検査実施体制整備に伴い、観察期間の発端者の遺伝学的診断確定数は著明に上昇していったが、意思決定の上昇には大きな影響を与えていないことが推察された。また、医学管理上一定のメリットがある筋強直性ジストロフィーよりも脊髄小脳変性症の方が高い実施率を示しており、疾患の遺伝の理解が難しいことが要因の一つであるかもしれない。帰結不明の症例を継続的に認めており、当院における発症前診断の進め方についても検討が必要であると考える。
家系の中に遺伝性疾患を有するクライエント(CL)は個々の背景に応じて自身の発症の可能性を知りたいと遺伝子診療部を訪れる。しかし、実際に発症前診断を受ける/受けないことを明確に意思決定するCLは一部であり、来談が途切れその後の経過が不明となる症例がある。とくに遺伝性神経筋疾患は未だ治療法や対処法がないものが多く、その発症前診断の進め方においても明確な指針がないのが現状である。そこで、当院における神経筋疾患の発症前診断を後方視的に検討し現状を明らかにすることとした。
【方法】
2012~2021年の10年間に来談した症例のうち神経筋疾患領域を抽出し、そのうち発症前診断を目的とした症例を後方視的に検討した。
【結果】
10年間の来談症例のうち神経筋疾患領域は221例、そのうち発症前診断目的の症例は52例であった。疾患内訳は脊髄小脳変性症が最多で22例、ハンチントン病14例、筋強直性ジストロフィー12例と続いた。発端者の診断が遺伝学的に確定している症例は38例、臨床診断のみは8例、診断不確実例は6例であった。実際に発症前診断を受けたのは8例、継続中5例、受けなかったのは6例で、中断後の経過が不明な症例は33例であった。また上記3疾患での疾患ごとの発症前診断の実施率は脊髄小脳変性症が最も高かった。
【考察】
発症前診断においては発端者の遺伝学的診断が確定している必要がある。遺伝学的検査実施体制整備に伴い、観察期間の発端者の遺伝学的診断確定数は著明に上昇していったが、意思決定の上昇には大きな影響を与えていないことが推察された。また、医学管理上一定のメリットがある筋強直性ジストロフィーよりも脊髄小脳変性症の方が高い実施率を示しており、疾患の遺伝の理解が難しいことが要因の一つであるかもしれない。帰結不明の症例を継続的に認めており、当院における発症前診断の進め方についても検討が必要であると考える。