講演情報

[O9-1]副腎白質ジストロフィー患者(ALD)への造血幹細胞移植のために保因者診断を実施した同胞女性への支援について

張 香理1, 松川 敬志1,2, 石浦 浩之1,2, 後藤 順3, 辻 省次4, 戸田 達史1,2 (1.東京大学 医学部附属病院 ゲノム診療部, 2.東京大学 医学部附属病院 脳神経内科, 3.国際医療福祉大学 市川病院 脳神経内科, 4.国際医療福祉大学 大学院)
【背景と目的】ALDはX連鎖性の遺伝性疾患であるが、発症早期の大脳型患者に対しては造血幹細胞移植が症状の進行停止に有効であるため、血縁女性に対する保因者診断の意義が変わりつつある。例えば当院では患者の移植を検討する際、同胞女性がHLAの適合がありABCD1遺伝子に病的バリアントを持たない場合に移植ドナーとしての協力をお願いしており、これは患者への移植がスムーズという点で患者にとっての医学的有益性が高い。今回はこのような女性に対する支援について、当院での経験からそのあり方を検討する。【方法】2016年から5年間にALDに関する当院での遺伝カウンセリング(GC)を受診した血縁女性19名のうち同胞患者に移植が考慮されるために自身の保因者診断を検討することになった4名について、年齢や背景、保因者診断の実施状況や転帰などを受診記録より後方視的に分析した。【結果】平均年齢は38歳(24-59歳)、3名が既婚、2名は子がいないが将来的に挙児希望あり、他の2名には息子と娘がいた。4名全員が移植ドナーとしての適合診断と併せて保因者診断を希望したが、1名は持病等の理由でドナー候補とならず検査を保留した。検査前のGCでは、結果が陽性だった場合に同胞患者のドナーになることは難しいものの、息子の将来の発症を考慮した検討ができることを前向きに捉えていた。結果は3名中2名が陰性、1名が陽性だった。陰性で移植ドナーとなった女性からは「よかったけど移植も怖い」、陽性だった女性からは「息子が将来発症するかもしれないし、娘にも私と同じことをさせるのかと思うと辛い」等の発言が見られた。【考察】ALD患者の移植検討には時間的な猶予がないことが多いが、同胞女性に対しては結果を見据えた十分なanticipatory guidanceを行うことが必要である。検査後も結果によって、ドナーとしての負担感や保因者であることの罪悪感について、寄り添いながら継続的に支援していくことが望まれる。