講演情報
[O9-3]妊娠中の遺伝カウンセリングが分娩方針の決定と児の予後予測の一助となった無症候性遺伝性血液疾患合併妊娠の2例
○金子 佳代子1, 佐々木 愛子2, 羅 ことい2, 林 彩世2, 阿部 早和子1, 鈴木 朋2, 藤野 佐保2, 藤部 佑哉2, 森田 泰介2, 梶原 一紘2, 小西 晶子2, 荒井 智大2, 海野 沙織2, 粟野 啓2, 東 裕福2, 上原 有貴2, 岡崎 有香2, 小澤 伸晃2, 村島 温子1, 左合 治彦2 (1.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科, 2.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 産科)
【背景】遺伝性血液疾患罹患女性の多くは無症状または軽症状であるため、妊娠中の採血で初めて異常を指摘される。しかしこれらは分娩時出血や新生児の血液障害の原因になりうるため妊娠中に適切な遺伝カウンセリングのもと診断を行う必要がある。【症例報告】症例1:30代女性。生来健康だったが実妹が分娩時採血でフィブリノゲン活性低値を指摘されたことを契機にご本人も検査施行。妊娠28週でフィブリノゲン活性値100mg/dlであったことから分娩管理目的に紹介となった。鑑別として低フィブリノゲン血症またはフィブリノゲン異常症の可能性が考慮されたが、フィブリノゲン異常症であった場合、出血傾向や凝固亢進症状など様々な症状を呈する可能性があり、分娩方針決定目的に遺伝子検査を施行した。結果、フィブリノゲン抗原597mg/dl、フィブリノゲンAα鎖p.Arg16Hisのミスセンス変異が確認されフィブリノゲン異常症の診断となった。この結果を踏まえ分娩時は大量出血がない限り補充は行わない方針となり、妊娠38週自然経腟分娩となった。児のフィブリノゲン活性値は正常で非罹患児と考えられた。症例2:40代女性。頸管無力症による早産歴があるも本人は生来健康。妊娠初期検査で施行したHbA1cが検査不能であったことからヘモグロビン異常症が疑われた。妊娠中の血糖管理はグリコアルブミンを用いた。本人は無症状であったが、検査異常の原因を確定したいとの意向で遺伝子検査施行。ヘモグロビンβ-globin遺伝子のシーケンスにてp.Lys61Asnが確認されヘモグロビン異常症(Hb Hikari)の診断となった。1/2の確率で児もHbA1cが検査不能となる可能性を説明した。【考察】妊娠中に初めて指摘された無症候性遺伝性血液疾患合併妊娠に対して遺伝カウンセリングと診断を施行し、その結果が妊娠・分娩管理と児の予後予測に有用であった2症例を経験した。ハイリスク妊娠に対する適切な管理のためにも遺伝子診断は重要である。