講演情報

[O9-4]他院での羊水検査でダウン症候群の診断を受けた後に実施した遺伝カウンセリングの経験

黄瀬 恵美子1,2, 小島 朋美1, 佐久 彰子1, 古庄 知己1,3,4 (1.信州大学医学部附属病院 遺伝子医療研究センター, 2.信州大学医学部附属病院 看護部, 3.信州大学医学部 遺伝医学教室, 4.信州大学医学部 クリニカル・シークエンス学講座)
【背景】信州大学医学部附属病院では、羊水染色体検査をベースにした出生前診断を希望した全ての妊婦に対して、遺伝子医療研究センターで認定遺伝カウンセラー及び臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング(GC)を実施している。また、他院で出生前診断を受けた後に結果の解釈や診断名に合わせた自然歴や医療社会資源の情報提供を含めたGCも行っている。今回、他院の羊水検査にてダウン症候群(DS)と診断された後に当センターのGCを希望し、出産に至った症例を報告する。【症例】43歳、2G1P。分娩予定の病院で高年妊娠を理由に母体血清マーカー検査を受けDSの確率が1/4であった。その後、羊水検査を受けトリソミー型DSと確定した。20週1日、妊娠継続を断念するかの判断の期限が迫られているため、夫婦で話を聞いてから検討したいと当センターでのGCを希望し来談された。妻はDSの合併症や出生後の生活の知識はないが、産み育てたい希望がある一方、多くの妊婦が妊娠継続を断念するという情報を見聞きし、出産することへの迷いがあった。夫は妻の意向には添いたいが、生まれてくる子の気持ちを考えると迷いがあった。DSについての包括的かつ具体的な情報を聞いた後には、妻は自身が妊娠を中断することはできないと改めて気づき、夫も妻と同じ方向で進んでいけるとの実感に至った。その後、夫婦は妊娠継続し小児専門病院での出産をすることとなった。【考察】出生前診断に関しての情報提供は受けていたが、検査対象疾患についての情報提供は十分には受けられていなかった。DSを持つ小児・成人の包括的診療を行っている部門であるからこそ出生後の患者の様子や医療社会資源についての具体的な情報提供ができたと言える。羊水検査受検を希望する多くの妊婦は、胎児の染色体異常が診断された際には妊娠継続を困難と判断することが多いかもしれないが、その時々の夫婦の気持ちに寄り添い続けることの重要性が示唆された。