講演情報

[P14-2]大腸癌に対するユニバーサルスクリーニング, 市中病院における現状と課題

佐藤 辰宣1,2, 河合 貞幸3, 間 浩之4, 黒上 貴史2, 川口 真矢2, 大野 和也2, 大端 考4, 多久 佳成5, 齋藤 洸平1, 新井 一守6, 岩崎 朋弘7, 臼井 健8 (1.静岡県立総合病院 遺伝診療科, 2.静岡県立総合病院 消化器内科, 3.甲賀病院 内科・腫瘍内科, 4.静岡県立総合病院 大腸外科, 5.静岡県立総合病院 腫瘍内科, 6.静岡県立総合病院 病理診断科, 7.静岡県立こども病院 診療支援部 検査技術室, 8.静岡社会健康医学大学院大学)
【背景】大腸癌の5%程度が遺伝性大腸癌とされ, リンチ症候群(LS)の頻度が最も高い. LSの拾い上げとしてアムステルダム基準2(AC)や改訂ベセスダガイドライン(BG)が用いられてきたが, 同基準では10%ほどのLSを見落とすことが問題とされていた. 欧米を中心に全大腸癌患者に対してマイクロサテライト不安定性検査やミスマッチ修復(MMR)タンパクの免疫染色を行うユニバーサルスクリーニング(US)が提唱され, 本邦でも施設によってUSの導入が始まった. しかし, USのためには, 病理診断科や遺伝診療科など複数科の協力が不可欠であり, 市中病院での導入は敷居が高く, 報告は少ない. そこで, 市中一般病院である当院でのUSの現状を把握する目的に本研究を行った.【方法】当院では消化器内科, 消化器外科, 腫瘍内科が協力し大腸癌臨床診療を行っている. 2020年5月より病理診断科, 遺伝診療科とも協力の上, USを導入した. 70歳以下もしくは71歳以上+BGを満たす大腸癌切除患者を対象にMMR染色(PMS2, MSH6でスクリーニングをしている)を行い, MMR欠失が認められた場合, 遺伝診療科にコンサルトし遺伝カウンセリング(GC)の後, 生殖細胞系列のMMR遺伝子検査の施行の是非を決めて頂くという診療手順となっている.【結果】US開始時期から2022年3月時点で111例にMMR免疫染色が施行された. 背景として50歳以下20人, 51-60歳39人, 61-70歳50人, 71歳以上+BGを満した患者が2人であった. 111例中4人(3.6%)でMMRタンパクの欠失を認めた. 4人の年齢は33y, 62y, 62y, 66y. ACは1例/BGは2例が満たしていたが, 残る2例はいずれの基準も満たしていなかった. 4例全員にGCを勧めたが, うち2人が遺伝診療科受診を希望しGCが施行された. GCを施行した2例とも現時点では生殖細胞系列のMMR遺伝子検査は行っていない.【結語】市中一般病院においても各科協力の元, GCまでを出口戦略としたUSが円滑に施行できていたが, GC受診率の向上は課題と考える.