講演情報
[P15-1]遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)のリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)選択に影響する患者背景や要因の検討
○向井 めぐみ1, 植野 さやか1, 菅原 宏美1, 板垣 あい1, 矢野 紘子1,2, 澁谷 剛志1,2, 広利 浩一1,3, 尾上 琢磨1,4, 河村 美由紀1,4, 境 秀樹1,4, 森田 充紀1,4, 田村 和朗1, 松本 光史1,4 (1.兵庫県立がんセンター 遺伝診療科, 2.兵庫県立がんセンター 婦人科, 3.兵庫県立がんセンター 乳腺外科, 4.兵庫県立がんセンター 腫瘍内科)
【背景・目的】近年、遺伝性乳癌卵巣癌(以下HBOC)と診断される人は増加している。HBOCと診断された場合、リスク低減卵管卵巣摘出術(以下RRSO)が望ましいが、必ずしも選択される訳ではない。そこでRRSO選択に影響する患者属性、臨床的背景について後方視的に検討した。【方法】2018年4月から2022年5月末までにHBOCと診断され、当院で遺伝カウンセリングを受けた卵巣癌未発症女性を対象とした。2022年5月末時点で35歳未満あるいは乳癌治療中患者は解析対象外とした。【結果】RRSO実施群(予定者含む)は42名、未実施群は20名であった。実施群と未実施群でそれぞれ年齢中央値は47.5歳(35-74歳)と44歳(35-74歳)、乳癌罹患歴は85.7%と45%、閉経後は78.6%と45%、子どもを有するは88.1%と60%であり、それぞれ実施群で高率(p<0.05)であった。実施群は発端者32/42名(81%)が多く、未実施群は血縁者15/20名(75%)が多かった(p<0.05)。実施群の78.6%はRRSOを保険診療で行っていた。発端者と血縁者ともに卵巣癌の家族歴はRRSO実施率に影響しなかった。RRSOを選択しない理由は、35~40歳代では挙児希望以外に時間的経済的制約や手術のタイミングがあげられ、50代以降では未発症臓器の手術であることがあげられた。【考察】RRSO実施群と未実施群とも40歳代を中心に各年代に分布している。RRSO選択には乳癌罹患歴、保険適用、子どもを有しているが寄与要因であった。卵巣癌の家族歴がRRSO選択に影響しないのは、HBOCにおける卵巣癌リスクへの理解が反映されていると考える。費用負担がRRSO阻害要因の1つと考えられ、HBOC未発症診断者が増加傾向にある中、未発症者のRRSO保険適用が望まれる。また未実施群に対して、60歳代以降の初発卵巣癌発症も鑑み、認識や行動変容への働きかけが大切である。他院でサーベイランス実施の場合でも、その人の状況に合わせた働きかけができる体制が重要と考える。