講演情報
[P15-11]当院における遺伝性乳癌卵巣癌症候群の現状
○安藝 史典1, 伊藤 末喜1, 上地 一平2, 尾﨑 信三2, 中村 衣世2, 川村 貴範3, 岡添 友洋3 (1.伊藤外科乳腺クリニック, 2.細木病院外科, 3.高知生協病院外科)
2020年4月から原発乳癌患者に対して、BRCA1/2遺伝子検査が、サーベイランス手術目的の検査として保険適応となった。これによって、遺伝学的リスクのある患者に対して積極的にBRCA遺伝学的検査が行われるようになった。乳腺専門クリニックにおけるhereditary breast and ovarian cancer(以下、HBOC)の現状について報告する。 乳癌患者に対して、NCCNガイドラインのHBOC拾い上げ基準を満たす高リスクの患者を拾い上げて遺伝カウンセリングを行っている。BRCA1/2遺伝子検査を受けるかどうかを自己決定していただいている。HER2陰性転移再発乳癌患者では、コンパニオン診断として、BRCA1/2遺伝子検査を行っている。2020年4月から2022年6月までに診断治療した原発乳癌69例に対して、NCCNガイドラインのHBOC拾い上げ基準にそって、リスク評価を行い、31例(44.9%)を拾い上げた。拾い上げ理由は、45歳以下5例、60歳以下トリプルネガティブ1例、両側乳癌10例、乳癌の家族歴16例、卵巣癌の家族歴1例であった。拾い上げた31例に対して、遺伝カウンセリングを行った。3例は乳癌卵巣癌の家族歴がなく、multi gene panel検査(以下、MGP検査)も提示を行った。BRCA1/2遺伝子検査を31例中4例(12.9%)に行った。病的変異を1例認めた。これまでは、自費診療で遺伝学的検査を行ってきた。BRCA遺伝学的検査が保険適応になったことにより、BRCA以外の遺伝子変異の可能性からMGP検査が考慮される場合でも、自費のため希望されないこともある。遺伝学的なリスクを詳細に評価し、適切な遺伝学的検査を行うことが求められている。遺伝子変異を認めた場合には、家系員に対しても遺伝カウンセリングを行うことが重要である。今後、MGP検査が増加すれば、さらに家系員に対しての対応が問題になっていくと考えている。遺伝リスクの評価と、バランスのとれた遺伝学的検査実施が促進され、適切な遺伝カウンセリングを提供する必要性を感じている。