講演情報

[P15-2]乳癌を発症した遺伝性網膜芽細胞腫の1例

岩村 八千代1, 田路 悠太1, 八木 優樹1, 林 真理子1, 高野 博信1, 道免 寛充1, 市之川 一臣1, 山田 秀久1, 寺本 瑞絵2, 敷島 裕之3 (1.NTT東日本札幌病院 外科, 2.NTT東日本札幌病院 産婦人科, 3.札幌駅前しきしま乳腺外科クリニック)
【はじめに】遺伝性網膜芽細胞腫(以下、遺伝性RB)はRB1遺伝子の生殖細胞系列の変異による稀な疾患である。現在は発症者の遺伝子検査が保険承認され、小児期のサーベイランスのガイドラインもあるが、成人後の癌スクリーニングや治療に関する明確な推奨はない。今回、遺伝性RB家系で乳癌を発症し、治療方針を検討した1例を報告する。【症例】70代女性【現病歴】X年Y月、右乳房しこりで受診。StageIIBのトリプルネガティブ乳癌の診断。【既往歴】1歳時、左網膜芽細胞腫にて眼球摘出。【家族歴】長男40代、1歳時に片眼摘出、対側眼局所治療。孫10代女性、1歳時片眼局所手術。【経過】本人家族とも臨床的に遺伝性RBであり定期的な眼科フォローはあるが、詳細な遺伝カウンセリングや確認検査は未施行であった。乳癌治療において、放射線照射や化学療法による利益と二次がんのリスクの可能性について話し合った。術前化学療法EC→DTX(エピルビシン、シクロホスファミド、タキソテール)を施行し、Clinical PRで、手術を行った。照射は避けて乳房全摘の術式を選択された。【考察】遺伝性RBでは、眼腫瘍への照射による二次がんリスク、その後の肉腫や癌のリスクが報告されている。成人発症癌のスクリーニングについて、小規模だが海外の報告がある。乳癌の発症は40代以降が多く、一般の発症年齢と同程度のため、通常検診でよい。しかし、乳癌術後照射については、Li Fraumeni症候群のような確立した見解はないため、個々の症例で、年齢、癌再発リスク、照射の利益と不利益についてよく話し合う必要がある。本例は高齢のため乳房温存および照射も可としたが、強い温存希望はなく、全摘を希望された。また、次世代血縁者2人は遠方の眼科クリニックでフォローされており、二次がん教育を含めた遺伝カウンセリングも必要と考えた。