講演情報

[P15-3]当院におけるHBOC診断後のフォローアップの現状と今後の課題

丹羽 優莉1, 角 朝美1, 角 真徳1, 岩田 愛美1, 宇野 あす香1, 浅井 英和1, 近藤 紳司1, 岡田 節男2 (1.公立陶生病院 産婦人科, 2.公立陶生病院 がんゲノムセンター)
【背景と目的】HBOCは診断やフォローアップに複数の診療科が関わるため、各診療科間での情報共有が重要である。主治医が主体の診療体制の当院におけるHBOC診断の現状と課題について考察する。
【対象と方法】2018年4月から2022年3月までに当院でBRACAnalysisを施行し、HBOCと判断した患者の診断状況やその後の診療経過をカルテから収集し、後方視的に検討した。
【結果】対象期間内にBRACAnalysisを施行した患者は44例でうち9例に病的バリアントを認めた(BRCA1: 3例、BRCA2 : 6例)。HBOCと診断した9例のうち、乳癌を契機に診断したものは7例、卵巣癌を含む婦人科疾患を契機に診断したものは2例だった。8例に遺伝カウンセリング(GC)を施行した。GC後、サーベイランスのために他科受診をしたものは2例で、そのうちリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)およびリスク低減乳房切除術(RRM)を受けたものは1例、卵巣癌の維持療法終了後にRRMを希望しているものは1例だった。RRSOは可能であるが手術を希望しなかったものは2例で、いずれの患者もその後当院婦人科受診はしていなかった。
【考察】当院ではHBOCと診断した場合の対応プロトコルはなく、サーベイランスのための他科受診の設定などは診療科に一任されている。リスク低減手術の希望がない場合、特に卵巣に対するサーベイランスは乳癌のそれに比べ有用性が証明されていないこともあってか、婦人科受診はなされない傾向にあった。しかし、継続的な受診により、疾患の早期発見につながる可能性の指摘や、リスク低減手術希望への意志変化がみられるなどの報告もある。罹患癌の主治医からの他科受診勧奨のみならず、関連科もその患者の受診状況を把握し診療支援ができるような包括的な体制の構築が必要であると思われた。