講演情報

[P15-4]リンチ症候群の確定を契機に診断された子宮峡部癌の1例

本田 裕1, 山北 伊知子1, 大原 涼2, 梅木 崇寛2, 隅井 ちひろ2, 熊谷 正俊2 (1.広島市立北部医療センター安佐市民病院 がんゲノム診療科, 2.広島市立北部医療センター安佐市民病院 産婦人科)
子宮体下部から発生する子宮峡部癌は、子宮体癌のなかでもリンチ症候群との関連が特に高く、約30%がリンチ症候群と診断されたとの報告がある。今回我々は、リンチ症候群の診断を契機に子宮頸部腺癌から子宮峡部癌に診断が訂正された症例を経験したので報告する。症例は33歳、女性。不正性器出血を主訴として前医を受診、子宮頸部腫瘤および右卵巣腫瘍の精査のため、当科紹介となった。子宮鏡検査で内子宮口付近から発生する表面不整なポリ-プ様病変を認めたため、この部位を生検した。病理検査では内頸部型を主体しとした腺癌を認め、子宮頸部腺癌と診断、画像診断から右卵巣癌または転移性卵巣腫瘍の合併も疑われた。右卵巣癌または転移性卵巣腫瘍合併の子宮頸部腺癌IB2期相当の診断で、手術を施行した。術後の病理検査では、子宮頸部に漿液性癌を主体とした腺癌を認めたが、右卵巣には明細胞癌を主体とした腺癌、子宮内膜にも類内膜癌も合併し、3重複癌と診断された。遺伝性腫瘍を疑う家族歴はなかったが、若年発症、リンチ症候群関連腫瘍が2つ重複しており、リンチ症候群を疑った。マイクロサテライト不安定検査(MSI)を施行しMSI-Hiであったため、遺伝カウンセリングを実施、DNAミスマッチ修復遺伝子の遺伝学的検査を行った。MSH6遺伝子にヘテロのナンセンス変異(c.3103C>T(p.Arg1035*)があり、リンチ症候群と確定された。子宮頸癌について再検討した結果、リンチ症候群と診断されたことに加え、発生部位、腺癌の主体が子宮頸癌ではほとんど認められない漿液性癌であることから、子宮峡部癌と訂正された。遺伝性腫瘍を疑った場合、その遺伝学的検査は治療が一旦終了した後に行われることが多い。子宮峡部癌の発生部位は子宮頸部と接しており子宮頸癌との鑑別に苦慮することが多く治療内容も異なることから、リンチ症候群の可能性がある子宮峡部癌では治療と平行して遺伝学的検査を考慮すべきと考えられた。