講演情報
[P15-5]HBOC症候群と診断された乳癌におけるリスク低減手術の経験
○高橋 瑞穂1, 前田 浩幸1, 津吉 秀昭2, 品川 明子2, 井川 正道4, 廣野 靖夫3, 五井 孝憲1 (1.福井大学 医学部 第一外科, 2.福井大学 医学部 産科婦人科, 3.福井大学医学部附属病院 がん診療推進センター, 4.福井大学医学部附属病院 遺伝診療部)
【はじめに】2020年4月から遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)症候群におけるリスク低減手術が保険適応となり、その円滑な実施が求められている。【対象と方法】当院にてHBOC症候群の診断でリスク低減手術を施行した乳癌6例について、年齢、乳癌病期、手術術式、リスク低減手術の実施タイミングについて調べた。【結果】BRCA遺伝子の病的バリアント陽性例は、BRCA1が1例、BRCA2が5例であった。乳癌罹患時の年齢は平均40.4歳(28-54歳)、対側リスク低減乳房切除術(CRRM)施行時およびリスク低減卵管卵巣切除術(RRSO)施行時の平均年齢はそれぞれ46.3歳(40-54歳)と48.25歳(44-54歳)であった。乳癌病期0期・IA期・2A期の症例で原発乳癌手術と同時にCRRMを3例で施行しており、3期の症例では術後2年以内のためCRRMを選択しなかった。RRSOは乳癌病期1A/2A/3A/3C期の4症例で、乳癌術後しばらく経過してから施行していた。乳癌術式については6例とも乳房切除を選択し、CRRMを施行した3例では、同時乳房再建(人工物再建が2例、自家組織再建が1例)を施行していた。【考察】BRCA遺伝子検査適応のある症例に対し、乳癌診断後すぐにBRCA1/2遺伝子検査を施行した。そして、陽性者に遺伝カウンセリングを行うことにより乳癌の術式決定およびリスク低減手術の選択が円滑にできていたと推察される。病期3の局所進行乳癌症例においては、リスク低減手術による原疾患の悪化や免疫力の低下が危惧されたためCRRMは施行せず、死亡率低下と対側乳癌発症リスク低下が示されているRRSOのみ二期的に施行していた。【結語】乳癌診断後速やかに遺伝子検査を行い、HBOC症候群と診断された患者に対して遺伝カウンセリングを実施することで希望に沿ったリスク低減手術を円滑に施行できていた。