講演情報
[P15-8]当科乳癌症例におけるBRCA1,2遺伝学的検査施行例の検討
○坂田 英子, 大路 麻巳子 (新潟市民病院 乳腺外科)
【はじめに】BRCA1,2遺伝学的検査の保険適応拡大により検査対象症例は増加した。対象症例には基本全例に検査についての情報提供を行っており、対象症例の幅は広い。【目的】当科乳癌治療症例におけるBRCA1,2遺伝学的検査施行実施の状況とその検査結果を検討し、HBOCの日常臨床での問題点と課題を明らかにする。【対象と方法】2019年5月から2022年5月までの間にBRCA1,2遺伝学的検査を施行した乳癌159例を対象に、臨床所見と検査目的、保険適応対象項目、検査結果につき検討を行った。【結果】159例中、女性158例、男性1例、検査時年齢中央値は51歳(28-83歳)であった。検査タイミングと目的は、再発後オラパリブ適応判断のためのコンパニオン診断目的が45例(28.3%)、術前HBOC同定目的が54例(34.0%)、術後サーベイランス中のHBOC同定目的が60例(37.3%)であった。20例(12.6%)がBRCA1,2病的バリアント陽性(BRCA1;9例、初発乳癌罹患年齢中央値45歳;37-81歳、BRCA2;11例、同44歳;28-56歳)であった。20例中19例に乳癌家族歴を認め、残る1例は膵臓癌の家族歴を有し、自身は乳癌と卵巣癌を異時重複発症したBRCA1のトリプルネガティブ乳癌であった。BRCA1の3例に卵巣癌重複を認めた。コンパニオン診断目的の45例中、BRCA1,2病的バリアント陽性例は2例(4.4%)で、いずれも乳癌の家族歴を有する症例であった。病的バリアント陰性139例の保険適応対象項目の主な内訳は、年齢単独25例、コンパニオン診断目的単独23例、家族歴1名のみ21例、両側7例、と続いた。逆に家族歴が2名以上の8例を含め、保険適応2項目以上の63例と、遺伝的関与がが疑わしいながらBRCA陰性例も多く認められた。【考察】保険適応項目1項目のみ、特に年齢とコンパニオン診断単独のみでは全例BRCA1,2バリアント陰性であり、陽性確率は低いと言える。逆に家族歴濃厚であってもBRCA陰性例も多く、BRCA以外の遺伝子の関与の可能性も考えられた。