講演情報
[P16-4]一般妊産婦における出生前検査希望者の心理社会的背景についての検討
○白土 なほ子1, 廣瀬 達子1, 池袋 真1, 宮上 景子1, 坂本 美和1, 水谷 あかね1, 森本 佳奈2, 清野 仁美3, 吉橋 博史4, 山田 崇弘5, 佐村 修6, 関沢 明彦1 (1.昭和大学 医学部 産婦人科, 2.京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 医療倫理学・遺伝医療学分野, 3.兵庫医科大学 医学部 精神科神経科学講座, 4.東京都立小児総合医療センター 遺伝診療部 臨床遺伝センター 臨床遺伝科, 5.京都大学医学部附属病院遺伝子診療部/倫理支援部, 6.東京慈恵会医科大学 医学部 産婦人科教室)
【目的】一般妊産婦における出生前検査の受検傾向と妊娠に係る心理的状況を調査することで、出生前検査を希望する妊産婦の特色を明らかにする目的で調査を行った。【方法】18-44歳の妊産婦を対象に、年齢、地域の出生数の分布構成をマッチさせてWeb調査を実施した。妊産婦の背景や出生前検査についての知識や意識、K6,Edinburgh Postnatal Depression Scale:EPDS, State-Trait Anxiety Inventory:STAIなどの心理評価について調査した。本研究は成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「出生前検査に関する妊産婦等の意識調査や支援体制構築のための研究」の一部として行った。【結果】データ分析では妊娠7か月以降の妊婦2065人、出産後1年以内の褥婦1029人を解析した。妊婦の321人(15.5%)は出生前検査を施行、その内110人(5.3%)はNIPT,53人(2.6%)はACを受検していた。高年齢でART経験があり世帯年収が高い妊婦は出生前検査を高率に受けていた。妊産婦のK6,EPDS,STAIの心理評価項目は、それぞれに正の相関がみられた。背景として年齢、年収、心理評価項目などを解析したところ、若い妊産婦はEPDSが高い傾向にあった。また、妊娠中に児や母体に問題が指摘された場合、すべての心理評価項目が有意に高かった(p<.0001)。出生前検査受検妊婦は非受検妊婦に比しK6やEPDSなど気分の落ち込み、神経過敏の傾向が有意に高かった(p<.0001)。褥婦では出生前検査124人(12.1%),その内NIPTを46人(4.5%),ACを19人(1.8%)が受検しており、心理評価項目は妊婦と同様の傾向にあった。【結論】高年齢でART経験があり、経済的に余裕のある妊産婦、および心理的背景としては、うつ傾向や神経過敏傾向の妊産婦が出生前検査を受検する可能性が示唆された。また、妊産婦は自身や児に問題が指摘された場合に心理的負担を多く自覚していることが確認された。出生前検査を希望する妊産婦には心理社会的背景にも配慮して対応する必要性が示唆された。