講演情報

[P16-7]全染色体異数性およびCNVに対するゲノムワイドcfDNAスクリーニングに関する3年間のまとめ(第二報)

完山 和生1, Soster Erica2, 岡嶋 正治1 (1.ラボコープ・ジャパン合同会社, 2.Labcorp Genetics and Women's Health, San Diego, CA, USA)
【背景・目的】米国において、2015年に全染色体異数性およびCNV(Copy Number Variation)を対象とするゲノムワイドcf(cell-free)DNAスクリーニングが臨床検査として開始され、現在では世界各国で同様の検査が行われている。ACOG(米国産婦人科学会)は、検査精度や臨床的有用性に関して更なるエビデンスが必要としている。第66回大会では、第一報としてラボコープで3年間に受託した5万検体以上の希望理由や検査結果等の傾向を報告したが、さらにゲノムワイドcfDNAスクリーニングの検査精度についても分析したので第二報として報告する。

【方法】全染色体異数性、CNV(7Mb以上)および特定の微細欠失症候群を対象としたゲノムワイドcfDNAスクリーニングを実施するため、2015年8月~2018年8月の3年間に提出された55,517検体のうち、追跡調査を行った1,569例の妊娠転帰を後方視的に分析し、各染色体異常の感度、特異度、陽性的中率を評価した。

【結果】CNVに対して、感度 94.1%、特異度 96.7%、陽性的中率 72.6%であった。RATs(Rare Autosomal Trisomies: 13,18,21番染色体を除く常染色体トリソミー)に対しては、感度 87.2%、特異度 90.7%、陽性的中率 22.4%であった。

【考察】CNVでは高い感度・特異度を示し、70%を超える陽性的中率が確認された一方、RATsに対する陽性的中率は22.4%と低かった。ただし、RATsの偽陽性は、トリソミーレスキューから生じるUPDの可能性を示唆すると考えられる。また、本コホートに基づく別の分析では、cfDNAスクリーニングでRATs陽性、かつ胎児か胎盤に異数性が検出された症例の約47%に発育不全、早産、流産・胎児死亡、形態異常などの有害な妊娠転帰が確認されている。他の研究でも同様の報告があることから、胎児にRATsが検出されたかどうかに関係なく、妊娠管理上、有用な情報となる可能性があるが、リスクの定量化や妊娠管理に関する推奨を行うにはさらなるエビデンスの蓄積が必要である。