講演情報

[P16-9]無認定施設におけるNIPT陽性例への対応と問題点

木村 寛子1, 水口 雄貴1, 佐藤 卓1, 三須 久美子2, 末岡 浩2, 田中 守1 (1.慶應義塾大学 医学部 産婦人科学教室, 2.慶應義塾大学病院 臨床遺伝学センター)
【背景】母体血を用いた新型出生前遺伝的検査(NIPT)は母体血 cell-free DNA を用いて胎児 21・18・13 トリソミーについて検査をする。高年妊娠、染色体異常児の妊娠既往、胎児超音波異常などを含むハイリスク症例を検査対象として行われてきたが、検査の簡便性から、産科婦人科以外の診療科などの無認可施設によって十分な遺伝カウンセリングがなされないまま日本では対象外とされている項目を含めた実施が年々増加している。今回無認定施設で NIPT 陽性と判断された事例について報告する。【症例】29 歳、2 妊 1 産。自然妊娠し、妊娠 11 週に無認定施設にて全染色体 NIPT を受検した。結果から 20 番染色体部分重複の可能性を指摘され、当院へ確定的検査を希望して来院した。遺伝カウンセリングを経て、夫婦はマイクロアレイ検査含めた羊水検査の実施を希望した。妊娠 16 週に羊水検査を行い,染色体核型分析では、46,XY, 正常核型であったが、マイクロアレイ検査では臨床的意義不明な変化(VOUS)が X 染色体短腕上の微細重複として確認された。確認された微細重複は約 113 kb で、Opitz/BBB 症候群の原因となる MID1 遺伝子が含まれていた.検査結果を踏まえ実施した胎児超音波検査では異常は認めなかった。夫婦はこれらの結果説明および遺伝カウンセリングを経て,熟慮の末,妊娠 21 週に妊娠継続を諦めた。【結論】全ての染色体におけるトリソミー/モノソミーや、染色体の微細欠失/重複を対象とする新たなNIPTの実施に先立ち、臨床研究の実施による検査の精度・陽性 (陰性)的中率等の検証が望まれる。また, マイクロアレイ法に基づく羊水染色体解析の適切な実施のために、本症例のような症例の蓄積をし、大きな規模のデータベースを構築する体制作りを検討していくことが重要である。