講演情報

[P17-1]小児突然死における網羅的遺伝学的解析に関するご遺族へのアンケート調査

小崎 里華1, 内田 佳子2, 植松 悟子2, 柳 久美子3, 津島 智子4, 要 匡3 (1.国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 遺伝診療科, 2.国立成育医療研究センター 総合診療部 救急診療科, 3.国立成育医療研究センター研究所 ゲノム医療研究部, 4.国立成育医療研究センター 看護部)
【背景】小児の院外心停止は年間約2000人で、乳児が40%を占め、予後不良である。蘇生への反応なく死亡した症例の死因の推定は困難である。しかし、死因究明は、小児の予防可能死を減らす策を講じる上でも重要であり、遺伝性疾患では遺族の診断や治療が可能となる。当センターでは、院外心停止例において、死因究明のためにCT,感染症検査、タンデムマス、網羅的遺伝子解析等を体系的に実施し、網羅的遺伝子解析を実施した症例においては、遺族に結果の開示を含む遺伝カウンセリングを実施している。小児突然死に対する死因究明の体制整備に関する課題を抽出するために、遺族にアンケート調査を実施したので報告する。【対象と方法】対象は2017-2020年の院外心停止で、ご遺族に網羅的遺伝子解析研究の同意が得られ、結果を開示した遺族8例を対象とした。方法は、郵送による無記名式アンケート調査を実施した。本研究の実施にあたり施設内倫理審査委員会の承認を得た。【結果】対象となった8例中4例の遺族より回答を得た(回収率50%)。体系的な検査により「死因が判明した」との回答は2人だった。網羅的遺伝学的解析に関して「同じような遺族に検査を勧めたい」と回答は3人だった。結果判明の時期や遺族への連絡方法に関しては、「時間がかかり、突然の通知に戸惑った」という意見があった。解析結果の開示に関しては、4人とも「配慮をもって説明された」との回答だった。【考察】小児突然死症例で網羅的遺伝学的解析では、死因に関与する遺伝子変異を認めなかった症例を含んでいるが、遺族からは、肯定的な回答が多かった。その理由の一因として遺族の死因究明ヘの思いが窺えた。また、結果判明までの期間や連絡方法に関しての課題が抽出された。今後、解析や進捗状況の連絡について改善策を検討している。今後も症例の蓄積し、遺族に寄り添った体制整備の構築に努めたい。