講演情報
[P17-11]当院での多遺伝子パネル検査の実態調査
○箕浦 祐子1, 金子 景香1, 新川 裕美1, 幅野 愛理1, 高津 美月1, 土橋 映仁2, 古川 孝広3, 植木 有紗1 (1.がん研有明病院 臨床遺伝医療部, 2.がん研有明病院 病理部, 3.がん研有明病院 先端医療科 がん早期臨床開発部)
【背景】遺伝性腫瘍が疑われる際の遺伝学的検査は従来、臨床所見から疑われる遺伝子を単独で調べる単一遺伝子解析が主体であった.しかし,単一遺伝子解析のみでは除外できない遺伝性腫瘍の可能性や,初めから複数の遺伝性腫瘍が疑われる場合もあり,多遺伝子パネル検査(multi-gene panel testing: MGPT)を検討する場面が増えている.
【目的と対象】当院で2019年2月~2022年5月までに自費診療として出検したMGPT113件を対象とした.来談契機,がんの既往,検査結果等について電子カルテより後方視的に検討を行い、受検動機と遺伝学的検査結果の実態について調査することを目的とした.
【結果】7~67種類の遺伝子を対象とした計4社9種類のMGPTのいずれかを113例に実施し、病的バリアント(PV)は24例21.2%で認めた.来談契機別では,HBOC疑い75例中11例にBRCA1/2,1例にATM,1例にBARD1のPVを認め,Lynch症候群疑い10例中1例にMSH2,1例にMSH6,1例にBRCA1のPVを認めた.非罹患者は20例受検しており,4例にPVを認め,うち3例はBRCA1だった.検出されたPVのうち21例87.5%では,想定していた原因遺伝子でPVを認めた.VUSはPV症例含む40例35.4%に57バリアント認められ,BRCA2が7件と最も多かった.12例で複数のVUSを認め,1例は4種類の遺伝子上にVUSを認めた.PV・VUSともに報告されなかったのは56例49.6%であった。
【考察】全体的に,PVの検出された症例では,結果を前向きに捉え,本人または血縁者の癌の予防や早期発見のための行動変容につながっている.想定していなかった遺伝子(ATM,BARD1)にPVが見つかった2症例は,関連腫瘍未発症であり,各種ガイドラインを参考にしたサーベイランスを院内連携の上で提供している.一方で,MGPTではVUSが見つかる頻度が高く,結果で混乱を招くことも危惧される.検査前の遺伝カウンセリングでは,VUSを含めた結果を想定し,クライエントの正確な理解のために説明を工夫する必要がある.
【目的と対象】当院で2019年2月~2022年5月までに自費診療として出検したMGPT113件を対象とした.来談契機,がんの既往,検査結果等について電子カルテより後方視的に検討を行い、受検動機と遺伝学的検査結果の実態について調査することを目的とした.
【結果】7~67種類の遺伝子を対象とした計4社9種類のMGPTのいずれかを113例に実施し、病的バリアント(PV)は24例21.2%で認めた.来談契機別では,HBOC疑い75例中11例にBRCA1/2,1例にATM,1例にBARD1のPVを認め,Lynch症候群疑い10例中1例にMSH2,1例にMSH6,1例にBRCA1のPVを認めた.非罹患者は20例受検しており,4例にPVを認め,うち3例はBRCA1だった.検出されたPVのうち21例87.5%では,想定していた原因遺伝子でPVを認めた.VUSはPV症例含む40例35.4%に57バリアント認められ,BRCA2が7件と最も多かった.12例で複数のVUSを認め,1例は4種類の遺伝子上にVUSを認めた.PV・VUSともに報告されなかったのは56例49.6%であった。
【考察】全体的に,PVの検出された症例では,結果を前向きに捉え,本人または血縁者の癌の予防や早期発見のための行動変容につながっている.想定していなかった遺伝子(ATM,BARD1)にPVが見つかった2症例は,関連腫瘍未発症であり,各種ガイドラインを参考にしたサーベイランスを院内連携の上で提供している.一方で,MGPTではVUSが見つかる頻度が高く,結果で混乱を招くことも危惧される.検査前の遺伝カウンセリングでは,VUSを含めた結果を想定し,クライエントの正確な理解のために説明を工夫する必要がある.