講演情報
[P17-5]ゲノム研究とゲノム診療の境界に関する医師の認識についての現状調査(中間報告)
○仲 なつき1, 甲畑 宏子1,2,3, 江花 有亮1,2,3, 吉田 雅幸1,2,3 (1.東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 修士課程 医歯学理工保健学専攻 先進倫理医科学分野 遺伝カウンセリングコース, 2.東京医科歯科大学 生命倫理研究センター, 3.東京医科歯科大学病院 遺伝子診療科)
【背景・目的】これまで遺伝子解析は学術研究機関において研究の一環として実施され、その結果の一部がゲノム診療に活用されてきたが、近年の解析技術の進歩により、ゲノム診療への応用範囲は拡大している。最近、検体検査に関する医療法が一部改正され検査の品質・精度管理の観点から遺伝子解析における研究と診療の境界は明確であるべきだと提言されたが、現在のゲノム診療の場では、臨床検査としての遺伝学的検査とゲノム研究としての遺伝子解析の混在は残っている。そこで、本研究ではゲノム研究を実施している医師・歯科医師を対象に遺伝子解析における研究と診療の境界に関する認識について現状調査を行った。【方法】遺伝学的検査に関わる医師・歯科医師 (352名)に対し、同意を得た上で2022年3月-4月の期間にWebによるアンケート調査を実施した。【結果】82名より回答が得られた(回答率23.3%)。回答者の約6割がゲノム研究の解析結果を診療に用いる際に問題があると回答した。具体的な問題点として、1.医学的根拠の定まっていない解析結果の診療上の記録および保存、2.解析結果の二次的所見の開示に関わるものであった。さらに、ゲノム研究への参加を依頼する際、医師・歯科医師が受け持ち患者に研究参加を依頼する場合には、回答者の8割が、この関係性が参加意思決定に影響すると回答した。【考察】ゲノム研究結果の診療応用について、検査結果の保管と二次的所見の開示について問題があると回答する対象者が多かった。また、医療者が自身の受け持ち患者に研究参加を求める場合に患者の立場として拒否しづらいという懸念が多くみられた。これらの結果から、ゲノム研究結果の診療応用や受け持ち患者への研究参加依頼について対応方法の検討が必要であることが示唆された。