講演情報

[P17-6]本邦の遺伝性腫瘍領域における多遺伝子パネル検査の有用性【INSIGNIA study】

高嶺 恵理子1,2,3, 甲畑 宏子1, 高橋 沙矢子1, 小峯 真理子1, 江花 有亮1, 江川 真希子1, 池田 貞勝2, 小堀 華菜3,4, 松浦 拓人3,4, 田嶋 敦3,5, 大山 優3,4, 吉田 雅幸1 (1.東京医科歯科大学病院 遺伝子診療科, 2.東京医科歯科大学病院 がんゲノム診療科, 3.亀田総合病院, 4.亀田京橋クリニック, 5.杏林大学)
【目的】近年、遺伝性腫瘍領域において多遺伝子パネル検査(以下、パネル検査)の導入が進んでいる。東京医科歯科大学病院では2017年よりパネル検査の使用を開始していたが、2018年頃より米国においてより安価で信頼性の高いパネル検査が登場したので、翌年米国Invitae社の遺伝性腫瘍多遺伝子パネル検査を遺伝子解析研究(INSIGNIA study)として導入し、他2施設とともに本邦における有用性を検証した。【方法】2019年1月から東京医科歯科大学病院、亀田総合病院、亀田京橋クリニックにて遺伝性腫瘍を疑われた遺伝子診療部門の受診者(未発症者含む)に対し、同意を取得後、Invitae社の遺伝性腫瘍多遺伝子パネル検査(47遺伝子もしくは84遺伝子)を実施し、結果の開示を行った。【結果】2022年2月までに74名がパネル検査を受けた。18名(24.3%)においてpathogenic/likely pathogenicバリアントが同定され、うち8名にVUSも認められた。35名(47.3%)がVUSのみの結果となり、21名(28.4%)においてバリアントは認められなかった。P/LPバリアントが検出された遺伝子はBRCA2(5名)、PTEN(2名)、ATM、CDH1、MLH1、MSH2、MSH6、PALB2、PTEN、VHL等であった。【考察】パネル検査では単一遺伝子変異が疑われた疾患において、それ以外の遺伝子でバリアントが検出されることもあり、より包括的な遺伝情報が得られることが分かった。しかし、本邦ではまだサーベイランス方法の確立していない遺伝子にP/LPバリアントが検出されたり、過半数でVUSのみの結果となったりすることが想定され、事前に十分な説明をしておくことが望ましいと考えられた。また、比較的安価(約6万円)であることは受検者にとって有用であり、検査へのアクセス増加が期待できる。