講演情報

[P17-7]当院における甲状腺癌に対するがん遺伝子パネル検査の現状

大石 一行 (高知医療センター 乳腺甲状腺外科)
【背景】当院では,切除不能甲状腺癌に対して,包括的がんゲノムプロファイリング検査(CGP)とコンパニオン診断薬としてのオンコマインDx Target TestマルチCDxを導入している.【方法】2019年12月から2022年6月までに11例にCGPを,2例にオンコマインを提出しており,それらの組織型,治療歴,解析完遂率,摘出検体,検査所要日数, PGPV検出率,actionable変異検出率,druggable検出率などを検討した. 【結果】[CGP]組織型は乳頭癌8例,濾胞癌2例,円柱細胞癌1例.全例が前治療歴を有し,全例解析を完遂していた.パネルはFoundationOneCDx 10例(全例転移巣提出,摘出後平均経過期間14.6ヶ月),FoundationOneLiquid CDx 1例であった.検査同意から結果開示までの平均期間は45.2日.PGPV検出率は1例(9%)のみで,C-CATでactionable変異を提示されたものは73%(8/11),エキスパートパネルで実際にアクセス可能とされたものは64%(7/11)(RET融合遺伝子陽性2例,BRAFV600E変異5例)で,最終的に治療に到達したのは3例(27%)のみであった.[オンコマイン]組織型は乳頭癌1例,WDC-NOS1例で,2例とも前治療歴を有し,いずれも解析を完遂していた.摘出検体は,副腎転移1例(摘出後8ヶ月),原発巣1例(摘出後2年)で,検査同意から結果開示までの期間はそれぞれ12日,14日であった.RET融合遺伝子陽性例0%,actionable変異50%(1/2)だが,BRAFV600E変異であり,RET阻害薬のコンパニオン診断薬であるためBRAF阻害薬+MEK阻害薬の治験には到達できなかった.【結語】 甲状腺癌は他癌と比較すると治療到達率が高く,CGPが有用である.オンコマインは研究用46遺伝子遺伝子解析を参照にできるが,RET遺伝子,RET融合遺伝子以外の遺伝子についてはコンパニオン診断薬としての機能がなく更なる適応拡大が望まれる.また,甲状腺乳頭癌ではBRAFV600Eが陽性となる可能性が高いため,BRAF阻害薬+MEK阻害薬の早期臨床承認が期待される.