講演情報
[P17-8]がん遺伝子パネル検査ではじめてBRCA病的バリアントが同定された3例
○山北 伊知子1, 本田 裕2 (1.広島市立北部医療センター安佐市民病院 がんゲノム診療科兼腫瘍内科, 2.広島市立北部医療センター安佐市民病院 がんゲノム診療科兼産婦人科)
当院は2020年4月にがんゲノム診療科を設置し、がんゲノム診療科専従医師1名と臨床遺伝専門医1名、およびがんゲノム医療コーディネータにより、少数のスタッフながら遺伝子診療部門への連携がスムーズに行えるよう心がけている。がん遺伝子パネル検査ではじめてBRCA病的バリアントがPGPV(presumed germline pathogenic variant)として同定された3例に対する当院のがんゲノム診療科としての対応について報告する。【症例1】64歳男性、直腸癌。Foundation One CDxからBRCA2に病的バリアントが検出され、PGPVと判断。病状進行のため遺伝カウンセリングを早めに設定する必要があった。遺伝学的検査の結果、somatic variantと診断され、結果開示から1月後に亡くなられた。【症例2】65歳男性、胃癌。Foundation One CDxからBRCA2に2箇所の病的バリアントが検出され、PGPVと判断。遺伝学的検査を強く希望されていたが、遺伝カウンセリング予定日に病状進行による体調悪化のためキャンセルとなり、その3日後に亡くなられた。より早い時期でのがんゲノム診療科への紹介が必要だと考えられた症例であった。【症例3】70歳男性、前立腺癌。Foundation One CDxからBRCA2に病的バリアントが検出され、PGPVと判断。オラパリブによる治療を受けながら、「娘のために」と遺伝学的検査を強く希望された。検査の結果、germline variantと診断された。娘さんにも遺伝カウンセリングが施行され、同variantを保持していることが判明した。現在婦人科と乳腺外科によるサーベイランスを施行中である。がんゲノム医療を担う多職種連携により遺伝カウンセリング外来へスムーズにつなげることを心掛けているが、がんゲノム医療外来への紹介のタイミングが遅すぎる症例もあり、各診療科のスタッフへ働きかけを行っている。さらには遺伝子診療部門の強化が緊急課題であり、認定遺伝カウンセラーの自院育成中である。