講演情報

[P17-9]多遺伝子パネル検査にてATMとMSH2のdouble heterozygotesを認めた例

藤原 有基1, 浦川 優作1,8,9, 坂田 周治郎2, 堀口 育代2, 矢野 友梨2, 米澤 優2, 河田 健吾3, 和唐 正樹4, 高田 雅代1,2, 永坂 久子1,2, 谷本 竜太5, 中村 聡子6, 中西 美恵2, 小笠原 豊1,3, 平沢 晃1,9, 川上 公宏1,7 (1.香川県立中央病院 がんゲノム医療センター, 2.香川県立中央病院 産婦人科, 3.香川県立中央病院 乳腺・内分泌外科, 4.香川県立中央病院 消化器内科, 5.香川県立中央病院 泌尿器科, 6.香川県立中央病院 病理診断科, 7.香川県立中央病院 血液内科, 8.神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科, 9.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床遺伝子医療学分野)
(背景・目的) 海外において、遺伝性腫瘍症候群に対する遺伝学的検査は多遺伝子パネル検査(MGPT)が主流であり、日本のHBOC診療ガイドラインでも推奨されている。そのため、日本でも広く普及される可能性があり、具体的な症例を基に有用性を把握しておくことは遺伝カウンセリングにおいて重要である。家族歴から複数の遺伝性腫瘍症候群が鑑別診断に挙げられる家系に対してMGPTを実施した症例を基に、MGPTの有用性について検討を行った。(症例)発端者は子宮体癌と右腎盂癌の既往がある67歳女性。家族歴として、父親:大腸癌、長姉:子宮癌、次姉:乳癌・肺癌、次姉の長女:乳癌、次女:脳腫瘍がある。家系内に若年性乳癌がある事から、リンチ症候群以外にもHBOC等の遺伝性腫瘍症候群を考慮し、MGPT(31遺伝子)を実施した。(結果)MGPTの結果、ATM c.2839-1G>T、MSH2 c.1276G>A(G426R)が同定された。ATM に対して、乳癌と膵癌、MSH2 に対しては、大腸癌、胃・十二指腸癌、子宮・卵巣癌、腎盂尿管癌に対するサーベイランスプログラムを乳腺外科、消化器内科・外科、婦人科、泌尿器科で実施している。(まとめ)MGPTでは多数の遺伝子を同時に解析できるため、複数の遺伝性腫瘍症候群が疑われる家系に対して鑑別診断を行う際にも有用である。また、double heterozygotesが判明する場合があり、それぞれの遺伝子バリアントに対応したサーベイランスを提供する事でより遺伝情報に基づいた個別化医療を提案する事が出来る。費用的には単一遺伝子検査で陰性の場合に、他の遺伝学的検査を追加で実施するよりも総合的な費用を抑えられるというメリットがある。VUSが多く検出される可能性があるが、バリアントと臨床症状をデータベースに集積することでバリアントの意義解釈に役立つことが予測される。