講演情報

[P18-2]ハンチントン病の発症前診断を受検した陰性者の結果開示後の影響についての文献調査

大澤 春萌1, 松川 愛未2, 和田 敬仁3, 小杉 眞司1 (1.京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 医療倫理学・遺伝医療学分野, 2.国立がん研究センター東病院 遺伝子診療部門, 3.京都大学大学院 医学研究科 ゲノム医療学講座)
【背景・目的】ハンチントン病(HD)は、舞踏運動などの不随意運動、精神症状および認知症を主症状とする慢性進行性の神経変性疾患である。現時点で根治的な治療法・予防法は確立されておらず、HDの発症前診断は、結果開示後の影響について十分に検討した上で受検することが求められており、陰性でも家族との関係性に影響を与える可能性が指摘されている。そのため、今後の遺伝カウンセリングのあり方を検討することを目的として、陰性者を対象に、HDの発症前診断受検による影響について調べた。
【方法】[ハンチントン病 AND 発症前診断 AND 陰性]を医中誌webで検索し、[(“huntington's disease” OR “huntington disease”) AND (“predictive testing” OR “presymptomatic testing”) AND (“negative” OR “non carrier”)]をPubMedで検索し、その中からHDのat risk者で発症前診断を受検し陰性だった者の結果開示後の影響についての記載がある論文を選定した。
【結果】対象論文として、11報が該当した。陰性者の反応としては、自身の発症リスクや子どもへの遺伝が無いことに安堵感を覚えていた。一方で、これまでHDを受け継ぐことを予期して生活してきたことにより結果をすぐには受容が出来ないことや、新しく自分自身を陰性者として再定義しなくてはならないことに心理的負担を抱くことが示されていた。また、発症している家族や発症前診断で陽性あるいは未受検の同胞に対して罪悪感を抱くことが示されていた。
【考察】HDのように治療法・予防法の無い神経変性疾患の発症前診断の遺伝カウンセリング担当者は、陰性の結果に期待を抱くクライエントに対し、陰性者特有の課題があることに留意して関わっていく必要があると考えられる。また、陰性者に対するフォローアップで求められる支援についても検討していく必要があると考えられる。今後、国内でも発症前診断受検後の影響についての調査が求められる。