講演情報
[P18-3]血縁者の遺伝カウンセリング受診率に影響を与える要因-HBOC家系における検討-
○板垣 あい1, 植野 さやか1,2, 菅原 宏美1, 向井 めぐみ1, 矢野 紘子1,3, 澁谷 剛志1,3, 広利 浩一1,4, 尾上 琢磨1,5, 境 秀樹1,5, 森田 充紀1,5, 河村 美由紀1,5, 田村 和朗1, 松本 光史1,5 (1.兵庫県立がんセンター 遺伝診療科, 2.兵庫県立がんセンター 研究部, 3.兵庫県立がんセンター 婦人科, 4.兵庫県立がんセンター 乳腺外科, 5.兵庫県立がんセンター 腫瘍内科)
【背景・目的】近年、BRCA1/2遺伝学的検査は日常診療で広く行われるようになり、HBOCと診断される患者が増えている。遺伝学的情報は血縁者にとっても有益な情報であるが、血縁者の遺伝カウンセリング(GC)受診は必ずしも多くない。そこで、血縁者のGC受診率及び受診に影響を与える因子について後方視的検討を行った。【方法】2013年2月~2022年2月末日までに当院でHBOCと診断された84人の家系を対象とし、2022年5月末日までの血縁者(20歳から75歳までの第一度近親者)のGC受診歴、発端者の病歴、血縁者の属性を解析した。【結果】血縁者245人中69人(28.2%)がGCを受診した。発端者にHBOC関連癌罹患歴が複数ある場合、血縁者のGC受診率は24/59人(40.7%)に対し、いずれか一つの癌罹患歴の場合45/186人(24.1%)と低率であった(p=0.014)。GCを受診した血縁者の年齢中央値が38歳に対し、受診しなかった血縁者は51歳と有意に高かった(p<0.0001)。発端者との続柄別GC受診率は、子55/119人(46.2%)、親4/21人(19.0%)、同胞10/105人(9.5%)であった。発端者のHBOC診断日から血縁者のGC受診までの期間は、1年以内が多いが最長で4年後であった。【考察】発端者の複数の癌罹患歴は、血縁者の遺伝を考える機会となり受診に繋がる可能性がある。血縁者側の要因としては、年齢や発端者との続柄が関わっていた。受診しなかった血縁者の年齢が高いのは、発端者(40、50代が多い)の同胞や親の受診率が低くかったからと考える。特に同胞は別世帯となることや、遠方に居住している場合も多く積極的に受診を勧めにくいことが考えられる。発端者の同胞はサーベイランス開始推奨年齢に達していることが多く、医学的介入がより重要で、いかに伝えるかが課題となる。また血縁者が、数年後に受診するケースもあり長期に渡ってフォローすることが大切である。