講演情報

[P18-4]長崎大学病院における遺伝カウンセリングの現状と課題

高尾 真未1, 長谷川 ゆり2, 三浦 生子2, 松本 恵3, 伊達木 澄人4, 古賀 智裕5, 田中 彩3, 松尾 久美6, 永石 恵美6, 平間 理子1, 森藤 香奈子7, 佐々木 規子7, 松本 正8, 吉浦 孝一郎9, 三浦 清徳2 (1.長崎大学病院 ゲノム診療センター, 2.長崎大学病院 産科婦人科, 3.長崎大学病院 腫瘍外科, 4.長崎大学病院 小児科, 5.長崎大学病院 リウマチ膠原病内科, 6.長崎大学病院 緩和ケアセンター, 7.長崎大学 生命医科学域 保健学系, 8.みさかえの園 総合発達医療福祉センター むつみの家, 9.長崎大学 原爆後障害医療研究所 人類遺伝学)
【背景】当院では1996年より遺伝外来が開設され、2018年には遺伝カウンセリング(GC)部門を含むゲノム診療センターが設立された。2013年よりNIPT(Non Invasive Prenatal Testing)、遺伝性腫瘍の遺伝学的検査を開始、2015年からはIRUD(Initiative on Rare Undiagnosed Diseases)拠点病院として、地域の遺伝診療の中心的役割を担っている。近年の遺伝学的検査の保険適応拡大や検査体制の整備化、診断技術の向上、がんゲノムにおける個別化医療の進歩に伴い、遺伝診療を取り巻く環境は大きく変化している。【目的】当院における2013年から2021年3月末までのGC件数、遺伝学的検査受検数、及びその内容の経時的変化を明らかにする。【方法】当院でNIPTや遺伝性腫瘍の遺伝学的検査を開始した2013年4月1日から2021年3月31日までのGC数、来談目的、関連疾患、受検の有無、診断の有無について記述統計を行った。GCの相談内容に応じて、周産期、遺伝性腫瘍、小児、一般(成人発症疾患、発症前診断など)に分類し記述統計を行った。本研究は長崎大学病院倫理委員会の許可を得て実施している。(許可番号:22022125)【結果】GC総数は、2013年度から2021年度にかけて2倍に増加していた(204→446件)。特に、保険収載遺伝学的検査の拡大に伴い、2019年度は小児が前年度比5.6倍、一般が1.8倍、遺伝性腫瘍では2020年度に前年度比3.9倍と急激に増加していた。GC数の増加に伴い、遺伝学的検査受検者数、診断数も増加した。GC対象疾患は、2013年度は染色体疾患や神経疾患が多かったが、この数年は免疫疾患、循環器疾患、呼吸器や消化器疾患など多岐にわたっていた。【考察・結論】近年の遺伝医療を取り巻く環境の変化に伴い、今後も遺伝診療に関わる患者数は増加し、また対象疾患が多岐にわたることにより、各診療科との連携が重要となると思われる。充実した遺伝診療を行うためには、医療者の遺伝教育やシステム作りが課題である。