講演情報

[P18-6]先天性疾患における遺伝学的診断の内容が親の養育姿勢に与える影響要因の検討

伊藤 志帆1, 二川 弘司2, 福田 憲太郎2, 山中 暖日2, 黒田 真帆2, 本田 雅敬3, 吉橋 博史2 (1.東京都立小児総合医療センター 看護部, 2.東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科, 3.東京都立小児総合医療センター 臨床試験科)
【背景】 先天性疾患をもつ児の遺伝学的診断は、今後の成長発達や根拠のある健康管理の基軸として家族の見通しをもった養育の一助となる。一方、未診断疾患や疾患情報が限られる希少疾患では、親の受容過程やコーピングの妨げ、社会的孤立などの遠因となることが報告されているが本邦における先行研究はない。今回、先天性疾患を有する児の診断内容が親の養育に与える影響について調査した。【方法】 当院外来通院中の遺伝性疾患(ダウン症候群、染色体微細欠失症候群、不均衡型染色体構造異常、単一遺伝子疾患)および未診断疾患を有する児の親490家系を無作為抽出しアンケート調査を実施。対象期間:2020年4-6月。うつ病評価スケール(PHQ-9、GAD-7)、育児における自己効力感(PSE)、障害児を養育する家族のエンパワメント測定尺度(FES)を用いた親の心理特性、養育姿勢の評価を行った。【結果】 455名297家系(アンケート回収率60.6%)、有効回答率423名(父166名、母253名)。診断確定群-ダウン症候群、希少疾患、超希少疾患の3群、未診断群の4群に分類比較した結果、PHQ-9尺度では未診断群が診断確定群-ダウン症候群より有意に高く、PSE尺度では、診断確定群-ダウン症候群がその他確定診断2群と比較し有意に高い傾向がみられた。【考察】 海外の先行研究において、未診断疾患をはじめ慢性疾患を有する親では、うつ病性障害が頻度高く確認されている(McConkie-Rosell,2018)。今回未診断疾患群では、診断確定群-ダウン症候群を有する児の親より有意に高い傾向がさらに明らかとなったことの理由として、ダウン症候群では生後早期に診断確定に至る傾向があること、また標準化した健康管理に繋がりやすく、見通しをもった養育が可能である背景が考えられる。PSE尺度においては、ダウン症候群において有意に高い傾向があることから、親のメンタルヘルスが育児における自己肯定感を高める傾向が示唆される。