講演情報
[P18-9]当院における神経筋疾患に関する発症前診断の質向上のための取り組み
○金城 ちなつ1, 岡田 千穂1, 鹿嶋 見奈1, 宮田 海香子1, 宮崎 彩子1,2, 澤井 英明1,3 (1.兵庫医科大学病院 遺伝子医療部, 2.兵庫医科大学 臨床検査医学, 3.兵庫医科大学 産科婦人科学)
【はじめに】当院では治療法や予防法のない神経筋疾患に関する発症前診断を実施してきた。1回目の遺伝カウンセリング(GC)では疾患や遺伝学的検査についての説明を行い、2回目に発症前診断のメリットやデメリット、各々の結果に対する将来設計について話し合う。GCのほか、脳神経内科の受診や心理検査、公認心理師による面談も行っている。3回目のGCで意思確認し、遺伝学的検査の実施となる。今回、2回目のGCを終えた時点で遺伝学的検査の実施を危惧した症例を経験し、発症前診断の手順を再検討するに至ったため報告する。【症例】クライエントは27歳の男性で、婚約をきっかけに父がハンチントン病であることを母から知らされ、発症前診断を目的に来談した。[1回目GC]母と来談した。病気のことを隠していた母への怒りがある状況での来談となった。[2回目GC]婚約者と来談した。発症への恐怖や不安からと思われるやや威圧的な態度がみられた。父に会うことが望ましいと言及するも「母から様子は聞いている」と了解されず。陽性であった場合の将来設計についても熟考されていない印象であった。【課題】部内での検討にて、理解度に問題はないが発症者である父にも会わず、医療者側との信頼関係を構築できていない状況での遺伝学的検査は実施できないと考えた。本症例を経て、遺伝学的検査を実施する具体的な基準を設けていないこと、それをクライエントと共有できていなかったことが問題点として挙がった。さらに、受検後のフォローアップについても具体性がなかったため検討が必要とされた。【今後の展望】理解度やパートナーとの情報共有、態度などを項目とした基準を作成する。受検を不可とする場合には抽象的な評価ではなく、明確かつ改善可能な理由を提示できるようにしたいと考えている。また、受検後のフォローアップとして、陽性の場合には電話だけでなく来談を必須事項とした内容でのプランを策定する方針である。