講演情報

[P22-1]尿路結石症のヒトゲノミクス情報とモデル動物における腎特異的多層的オミクス情報の解析

茶谷 亮輔1, 田口 和己1,2, 須江 保仁1, 服部 竜也1, 岡田 朋記1, 浜本 周造1, 安藤 亮介1, 岡田 淳志1, 安井 孝周1, 岡田 随象2,3,4,5 (1.名古屋市立大学医学研究科 腎・泌尿器科学分野, 2.大阪大学医学系研究科 遺伝統計学, 3.大阪大学免疫学フロンティア研究センター, 4.東京大学大学院医学系研究科 遺伝情報学, 5.理化学研究所生命医科学研究センター)
【背景・目的】
尿路結石症は多因子疾患であり、複雑な要因が発症に関与していると考えられている。分子生物学的にも結石形成に関与すると予想される分子が報告されているが、詳細なメカニズムや各分子の関連は解明されていない。本研究では、ヒトのゲノムワイド関連解析(GWAS)サマリと結石モデルマウスの遺伝子発現解析・プロテオーム解析・リン酸化プロテオーム解析を統合解析することで、腎臓特異的な結石関連遺伝子を示した。
【対象・方法】
バイオバンクジャパンによる尿路結石症GWASサマリを用いてリスク遺伝子を推定した。遺伝子毎のリスク推定にはMAGMAを用いた。結石モデルマウスは8~10週齢のC57BL/6雄マウスにグリオキシル酸(GOX)を連日腹腔内投与し、腎実質にシュウ酸カルシウム結晶を発症させる。GOX100mg/kgを投与について0日、1日、6日の3群に分け、4匹ずつ用意した。腎臓にRNA-seq、LC-MSを用い、遺伝子発現、タンパク、リン酸化ペプチドを網羅的に定量した。多重検定補正はBenjamini-Hochberg法を用い、有意水準は0.05とした。
【結果】
MAGMAの解析では134の有意なヒトの結石関連遺伝子を同定した。モデルマウスではRNA-seqで1173/10828の遺伝子、 LC-MSで372/4969のタンパク、516/7217のリン酸化ペプチドが有意に変動していた。それぞれの分子をMGI-IDでアノテーションし、ヒトとマウス間で共通して有意である分子を同定したところ、遺伝子発現解析ではH2-Aa, Slc25a21, Apom, Ddah2, Mxd3, Slc34a1,プロテオーム解析ではUmod,リン酸化プロテオームではShroom3, Casr, Slc5a6, Slc22a12が共通して有意であった。
【考察・結論】
本研究により私たちは、腎臓において特異的に結石形成に作用する分子を明らかにした。今後これらの分子の機能的な研究が、結石形成機序の解明や創薬の観点で最優先事項と考えられる。