講演情報
[P22-3]卵巣子宮内膜症の腹腔鏡下手術後も繰り返す月経時の発熱を契機に家族性地中海熱と診断した一例
○松本 佳也1, 田坂 玲子1, 中川 倫子1, 柴田 悟1, 出口 昌昭1, 西郷 和真2, 池川 敦子2, 瀬戸 俊之3 (1.市立岸和田市民病院 産婦人科, 2.近畿大学病院 遺伝子診療部, 3.大阪公立大学大学院医学研究科 臨床遺伝学)
家族性地中海熱は、発作性におこる発熱と腹部、胸部の疼痛や関節の腫れなどの症状が繰り返される自己炎症性疾患である。MEFV遺伝子のバリアントが関連して炎症が起きると考えられているが、浸透率が高くないことや典型的な症状を呈しながらもMEFV遺伝子に疾患関連変異を認めない症例が少なくないため、発症には他の因子も関与していると考えられている。今回 卵巣子宮内膜症の腹腔鏡下手術後も繰り返す月経時の発熱を契機に家族性地中海熱と診断した症例について報告する。18歳から年に何度も発熱があり、21歳時に月経困難、月経時の発熱 下腹部痛 右卵巣嚢腫にて当科紹介受診、MRIにて両側卵巣嚢胞を確認、子宮内膜症 にて腹腔鏡下卵巣嚢腫切除術を行った。術中所見より子宮内膜症性嚢胞の微小破綻による月経時の発熱や下腹部痛と推察したが、退院後も39℃に至る発熱が確認された。月経時に熱発するため低用量ピルでコントロールした。発熱については当初 膠原病を疑われたが有意な所見は得られず、内科から不明熱にて他院に紹介されたため、同じ病院の産婦人科に紹介し、当科への通院は終了した。紹介先では原因が解明できず内科通院は終了した。手術から6年後 28歳にて子宮頚部細胞診異常にて再度 当院産婦人科に紹介された。23歳時よりジエノゲストを継続中で無月経のため月経時の発熱はないが、日々の発熱は続いていた。発熱の精査を希望され、臨床的所見より家族性地中海熱を疑い、遺伝学的検査を行った。家族性地中海熱診断基準に記載されたMEFV遺伝子のバリアントが2つ同定された。コルヒチン内服により、平熱には戻らないが、38度を超えなくなり家族性地中海熱と診断した。月経時の発熱に対して、内膜症性嚢胞や子宮附属器感染がないことは産婦人科以外での確認が困難である。稀な疾患ではあるが産婦人科では念頭に置く必要がある。