講演情報
[P26-13]当院におけるMulti-gene panel検査の現状と課題
○吉本 有希子, 小松 茅乃, 藤本 優里, 高原 祥子 (公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 乳腺外科)
【背景】近年欧米諸国では生殖細胞系列のMulti-gene panel(MGP)が急速に広まっている一方で、本邦ではそれと比して少ない。当院では2018年にMGPを導入し実施してきた。当院におけるMGPの現状と課題について報告する。【対象と方法】対象は2018/4月-2022/6月に当院でMGPを受けた27例で、検査結果や患者背景を診療録から抽出し検討した。【結果】検査内訳はmyriad社のmy Risk:17例(2018/4月-2021/3月)、コニカミノルタ社のMGP:10例(2021/4月以降)。病的変異は、BRCA2:4例、ATM:1例。VUSは13/27例 (48%)で20遺伝子に認められBRCA1/2-VUSと比して高い検出率だった。既往歴は癌既発症:16例、未発症:11例。保険適応拡大後のBRCA1/2遺伝子検査での陰性は222/252例(88%)。その後に単一遺伝子検査を追加したのはTP53:2例、MMR:1例(いずれも陰性)で、MGPを追加したのは1例でATM遺伝子の病的変異を認めた。2021年度に企業と共同で、遺伝性腫瘍が疑われる社員の検査費用の半額を企業が負担するプロジェクトを実施した。このような補助がある場合の検査実施率は57%(8/14例)と高かった。【国内でのMGPの課題】1;海外では単一遺伝性検査と比してMGPは費用対効果が高いという報告がある。しかし本邦では自費であるMGPは高額となる。2;MGPはVUS検出率が高く、浸透率が不明な遺伝子や臨床的にactionableではない遺伝子等が含まれることがある。3;現在本邦では複数の検査機関から多くの種類のパネルが上市されている。依頼する検査機関/パネル/遺伝子の選択の明確な基準はなく選定が困難である。4;MGPを実施する際には遺伝カウンセリングを含む遺伝医療を提供できる施設が必要であるが、そのような医療機関は限られている。【考察】MGPの臨床実用には課題も多いが、恩恵を受けられる患者も一定数いると考える。医療者は単一遺伝子検査とMGPに関する理解を深めて、患者に情報提供し適切に検査を選択することが重要である。