講演情報

[P26-17]当院におけるHBOC家系の胃癌・胆道癌・食道癌の家族歴と拾いあげの現状と課題

鈴木 綾子, 小原 令子, 横井 左奈 (千葉県がんセンター 遺伝子診断部)
【背景】HBOCの確定診断目的のBRCA1/2遺伝学的検査の保険適応が2020年4月から開始され、受検者は増加傾向にある。当院では、乳腺外科全手術予定患者を対象に拾いあげをおこない遺伝専門医が乳腺外科カンファレンスに毎週参加することで、乳腺外科医と保険適応該当患者の情報共有をしている。その後遺伝子診療科を受診し、遺伝カウンセリングを経て遺伝学的検査を受検の有無を決定する。 HBOCの関連癌として乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌があげられるが、胃癌、食道癌、胆道癌の罹患率が上昇するという報告がある。そこで本研究では当院でHBOCと診断されたクライエントの家族歴の現状を調べ、拾い上げの課題を考察することを目的とする。【結果】HBOCと診断されているのは77家系、97人であった。内、BRCA1病的バリアントを保持する家系は27家系、BRCA2は50家系であった。乳癌の家族歴があるのは46家系(59.7%)、卵巣癌11家系(14.3%)、前立腺癌23家系(29.9%)、膵臓癌19家系(24.7%)であった。胃癌の家族歴があるのは43家系でHBOC全体の55.8%を占めており、胆道癌は3家系(3.9%)、食道癌は6家系(7.8%)であった。また、従来の関連癌(乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌)の家族歴のない家系は16家系(20.8%)おり、かつ胃癌、胆道癌、食道癌の家族歴があったのは12家系(15.6%)であった。【考察】従来のHBOC関連癌以外で、特に胃癌の家族歴がある家系が乳癌の家族歴のある家系と同等の割合であったことから、家族歴聴取の際は胃癌の有無も注意して聞く必要があると考えられた。ただし、今回の調査では病的バリアントを持つのが父方家系か母方家系か不明な家系がほとんどであり、故に病的バリアント保持家系に胃癌が多いと断言はできないため更なる調査が必要である。