講演情報

[P26-19]モザイク型ロバートソン型転座を伴った小児急性リンパ性白血病

長谷河 昌孝1, 平林 真介1, 澤井 彩織1, 寺下 友佳代1, 杉山 未奈子1, 長 祐子1, 柴田 有花2, 長 和俊2, 矢部 一郎2, 真部 淳1 (1.北海道大学病院 小児科, 2.北海道大学病院 臨床遺伝子診療部)
急性リンパ性白血病(ALL)では腫瘍細胞の細胞遺伝学的な特性に基づいた層別化治療を行なっており、染色体検査は必須の検査の一つである。ALLにおける骨髄検査を契機として偶発的にモザイク型ロバートソン型転座を認めた症例を経験したため報告する。症例はB前駆細胞性ALLの5歳の女児。既往歴、家族歴に特記すべき事項はない。白血病診断時の骨髄検体(芽球90%)での染色体G分染法では46,XX[20/20]であったが、ALLのサブタイプの一つであるTCF3-ZNF384融合遺伝子t(12;19)(p13;p13)が定量PCR法で同定された。化学療法により完全寛解を達成した後の骨髄検体によるG分染法は45,XX, der(13;15)(q10;q10) [4/20]/46,XX [16/20]を示した。両親の了解を得たうえで末梢血のPHA刺激後の染色体検査においても30細胞中4細胞に同様の染色体異常を認め、モザイク型ロバートソン型転座と判断した。 ロバートソン型転座の中でもモザイク型は稀であり、白血病細胞が有するクローン性変化との鑑別が課題であった。血液学的寛解に加え、T/B細胞受容体遺伝子を用いたPCR法による白血病微小残存病変の測定において分子生物学的寛解(シグナルを認めない)となっても、染色体G分染法でモザイク型ロバートソン転座が残存することから、白血病発症とは無関係な先天性染色体異常と判断した。本症例ではモザイク型rob(13;15)(q10;q10)に偶発的にALLを発症したと考えるが、ロバートソン型転座の一部はがんの発症率が高くなることが知られている。例えば、rob(15;21)(q10;q10)においては、白血病細胞において21番染色体の一部が増幅したiAMP21と呼ばれるタイプのALLを発症するリスクが2700倍である。今後、類似症例の拾い上げと解析が必要と考えられる。