講演情報
[P26-3]IHCを先行したユニバーサルスクリーニングにて子宮体癌症例の2%程がリンチ症候群と診断される~前向き観察研究~
○鶴田 智彦1,2, 藤堂 幸治2, 山田 竜太郎2, 桑原 健3, 黒須 博之2, 蓑輪 郁2, 箕浦 祐子2, 見延 進一郎2, 鈴木 宏明3, 加藤 秀則2 (1.香川大学 医学部 周産期学婦人科学, 2.北海道がんセンター 婦人科, 3.北海道がんセンター 病理診断科)
【背景】リンチ症候群(Lynch Syndrome:LS)は常染色体顕性遺伝性腫瘍疾患である. 子宮体癌(Endometrial Cancer:EC)患者からLSを識別することは,後続癌に対する予防的な医療管理において有益であり,血縁者にも遺伝性評価や予防的医療の機会と選択肢を提供する.しかしEC診療時におけるLSの識別戦略は未だ定まらず,LS患者の多くは臨床現場において見過ごされている.効率/実用的なLSのスクリーニング法と科学的根拠に裏打ちされた管理体制の構築が必須である.本邦においてECにおけるLS患者のスクリーニング法の前向き研究報告は少ない.【目的】ECにおけるLSのスクリーニング方法を確立すること.【方法】当院において, 2019/10-2021/2の期間に治療前にECと診断され,当該研究に対する文章での同意を得た116例が対象.方法は手術検体組織のMLH1,MSH2,MSH6,PMS2蛋白質に対する免疫組織化学(以下IHC)染色を行い,DNAミスマッチ修復(mismatch repair:MMR)機能欠損腫瘍か否かを評価した.何らかのIHC陰性症例をLS疑い症例とした.その全例に遺伝カウンセリングを施行し同意を得た上でMMR遺伝学的検査を施行した.並行してMSI検査ならびにMLH1プロモーター領域のDNAメチル化分析を付加した.当該研究は当院におけるIRBにて研究承諾を得ている.【成績】ECは100例,異形内膜増殖症は6例,他癌と診断された症例は10例.EC100例のうちIHC陰性症例は19例認めた.19例全例にMMR遺伝学的検査を施行し2例(MSH2,MSH6)がLSと確定診断された.VUSは2例(MSH6),良性変異を1例(PMS2)の結果を得た.MSI検査にて,MSI-H:16例(16/19=84.2%),MSI陰性:3例であった.MLH1プロモーター領域の高頻度DNAメチル化は11例(11/19=57.9%)に認めた.【結語】ECにおけるLSのスクリーニング方法は,MMR蛋白質4種類のIHCを先行し絞り込みを行うことが有用である.IHC陰性症例は全体の約2割であり,高頻度にMSI-Hであった.子宮体癌の約2%がLSと同定された.