講演情報

[P26-7]当科におけるBRCA検査の現状と課題

阿部 宣子1, 紺谷 圭一1, 池内 真由美1, 橋本 新一郎1, 米原 優香2, 隈元 謙介2,3 (1.香川大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科, 2.香川大学医学部附属病院 臨床遺伝ゲノム診療科, 3.香川大学医学部附属病院 消化器外科)
【背景】乳癌は癌の中で女性の罹患率1位で、2018年に乳癌と診断される数は約95000例である。この中でBRCA1あるいはBRCA2遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントに起因する遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer:HBOC)は乳癌の約7-10%とされ、近年HBOCにおける保険診療の適応が拡大してきた。2018年7月に再発乳癌に対するOlaparib使用のためのコンパニオン診断(CDx)として、2020年4月にはHBOCの診断目的にBRCA遺伝学的検査が保険収載された。検査適応は1)45歳以下の発症2)60歳以下のトリプルネガティブ乳癌3)2個以上の原発乳癌4)第3度近親者内に乳癌または卵巣癌発症者の家族歴5)男性乳癌6)卵巣癌、卵管癌および腹膜癌既発症者である。当科におけるBRCA検査の実施状況を調査し、今後の課題を検討した。【対象と方法】2019年2月から2022年5月までに当科でBRCA1/2遺伝子検査を行った41症例。【結果】検査目的はOlaparibのCDx13例、HBOCの診断目的26例。2例は自費検査。CDxの13例の年齢中央値は58歳、BRCA1陽性が1例であった。診断目的26例の年齢中央値は45歳で、検査時期は乳癌手術前が11例、術後が15例。BRCA1陽性例が5例で、サブタイプはTriple negative3例、Luminal/HER2- typeが2例。BRCA2陽性例は3例で、全例がLuminal/HER2- typeだった。BRCA1/2陽性の8例のうち、乳房の手術術式は8例中6例が全摘、2例が部分切除だった。また、6例が術後に遺伝カウンセリングを受けていた。【考察】保険収載前も新規乳癌患者へは初診時に聴取した家族歴や年齢・サブタイプをもとにBRCA検査を適宜提案していたが検査数は少なかった。保険収載後は検査数が増加している。HBOCと診断された場合、リスク低減卵管卵巣摘出術,対側の乳房切除術も2020年から保険収載された。周術期のBRCA検査は術式決定や予防切除の適応について重要な要素であり、適切な診療体制構築が急務である。