講演情報

[P26-8]Germline BRCA2にpathogenic variantを認めた卵巣癌肉腫の一例

黒須 博之1, 三田村 卓1, 細川 亜美2, 佐々木 佑菜3, 柴田 有花3, 加藤 ももこ4, 矢部 一郎3, 渡利 英道1 (1.北海道大学病院 婦人科, 2.北海道大学病院 産科, 3.北海道大学病院 臨床遺伝子診療部, 4.FMF胎児クリニック東京ベイ幕張)
【緒言】BRCA1/2関連がんは卵巣がんの11.8~15%で認められるとの報告があるが、その大半の組織型は漿液性癌である。我々はgermline BRCA2にpathogenic variantのある卵巣癌肉腫患者の診療を行ったので、症例報告する。【症例】71歳女性、家族歴に母親の大腸癌があったが、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵癌、悪性黒色腫に罹患した近親者はいなかった。左卵巣腫大と腹水貯留より卵巣がんを疑い、開腹手術を行った。 左卵巣腫瘍の病理組織検査でGrade3類内膜癌の周囲に核分裂像を伴う異型紡錘型細胞の増殖を認めたため癌肉腫 pT1c2NXMX Stage IC2と診断した。術後補助化学療法としてTC (paclitaxel+carboplatin)療法を6サイクル行い、初回治療を終了した。8ヶ月後に仙骨に転移病変を認め、TC療法を再度6サイクル行ったところ寛解したため、現在はオラパリブ維持療法を行なっている。治療中に遺伝性乳癌卵巣癌の家系診断の希望があったためBRACAnalysisを行ったところ、BRCA2 c.5722-5723del(p.Leu1908Argfs*2)を認めた。【考察】本邦のデータベースによると、これまでにBRCA2関連卵巣がんで癌肉腫は登録されておらず、世界的に見ても稀と思われる。BRCA1/2関連卵巣がんはその他の卵巣がんより予後が良いとの報告があるが、一般的に卵巣癌肉腫の予後は不良であり、本症例でも比較的短期間のうちに骨転移が出現した。【結論】現在、卵巣癌診療においてはmy Choice CDXとBRACAnalysisが保険収載されている。漿液性癌の際にはこれらの検査が説明されることが多いが、他の組織型の場合には陽性率の低さから十分な説明がなされない場合も考えられる。卵巣癌肉腫の患者においても、希望があればgermline検査を行う意義があると考えられる。