講演情報

[P26-9]BRCA1/2病的バリアントなし同時性両側乳癌術後にLi-Fraumeni症候群(LFS)と診断し温存乳房への放射線治療を回避できた1例

常泉 道子1,2, 松沼 亮一1, 山口 慧1, 速水 亮介1, 敖 礼2,3, 原崎 正士2,4, 米本 崇子2,5, 小杉 理英子2,5, 齋藤 洸平2,5, 有安 宏之2,5, 佐藤 辰宣2,6, 金沢 佑治2,7, 浮田 真沙世2,3, 松浦 公美2, 臼井 健2,8,9 (1.静岡県立総合病院 乳腺外科, 2.静岡県立総合病院 遺伝診療科, 3.静岡県立総合病院 産婦人科, 4.静岡県立総合病院 小児科, 5.静岡県立総合病院 内分泌代謝科, 6.静岡県立総合病院 消化器内科, 7.静岡県立総合病院 耳鼻咽喉科, 8.静岡県立総合病院 ゲノム医療センター, 9.静岡社会健康医学大学院大学)
LFSはTP53の生殖細胞病的バリアントを原因とし小児期から成人期に多種多様な悪性疾患を発症する遺伝性腫瘍である。乳癌術後に長男が血液疾患を発症したことからLFSと診断、術後放射線治療を回避できた症例を報告する。症例は30歳女性 右乳房腫瘤、右乳頭異常分泌を主訴に乳腺外科紹介。精査にて同時性両側乳癌と診断した。家族歴は母方祖父が65歳で胃癌のみであった。30歳と若年かつ両側乳癌のため術前にHBOC検査施行、BRCA1/2病的バリアントなしであった。術式は右乳房切除+センチネルリンパ節生検、左乳房温存手術とした。両側ともに病理診断は非浸潤性乳管癌TisN0M0であった。左温存乳房への術後放射線治療の前に、6歳の長男が他院でTリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)と診断されたと報告を受けた。骨髄に浸潤がある場合、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)と急性リンパ性白血病(ALL)の明確な区別は難しく、骨髄芽球が25%以上である場合をALLとし25%未満をLBLとしている。WHO分類はLBLとALLを同じ病型に分類している。Chompret基準よりLFSを懸念し放射線治療の可否のこともあり乳腺外科のカンファレンスで遺伝カウンセリング(GC)へ紹介の方針となった。初回GCではHBOC以外の遺伝性腫瘍、LFS等についての説明、一度に複数の遺伝子を調べることができるMulti-gene Panel検査について説明した。2回目のGCで検査施行の意思ありAmbry BRCANext(-)を施行した。2か月後にTP53に病的バリアントありと結果開示した。悪性腫瘍の発生リスク、がん予防、サーベイランス、血縁者への影響について説明した。LFSは放射線による2次癌の発生のリスクがあり、病理診断で乳腺断端の距離は十分とれていたこともあり、予定していた左温存乳房への放射線治療はなしとした。各臓器のサーベイランスは各科で開始した。長男の主治医へは本人の了承をえて、母親にTP3に病的バリアントがあり長男へ50%の確率で遺伝する可能性を情報提供した。