講演情報
[P3-1]がんゲノム医療でバリアントが検出された遺伝子の関係性のグラフによる検討
○濱野 裕太, 構 奈央, 熊谷 健, 杉本 卓也, 太田 菜美, 南 佐和子 (和歌山県立医科大学附属病院 遺伝診療部)
【背景】当院実施のがん遺伝子パネル検査でShort Variant(以下SVと略)が検出された症例は183件あり、肺がん・膵臓がん・乳がんの3つで4割を占めていた。これら183件において、262遺伝子に1497個のSVが検出された。なかでもTP53・APC・KRASのバリアントが多く検出されていた。ただ、各々の要素数え上げでは、バリアントが検出された遺伝子の全体像や関係性は把握しづらい。【目的】そこで、全体像を捉える手段としてNodeとEdgeから構成されるグラフをSVのデータから作成し、遺伝子間の関係性を考慮した検討を行うことにした。【方法】がん遺伝子パネル検査でn個の遺伝子にバリアントが検出された時、遺伝子と対応するn個のNodeから成る完全グラフKnのデータを作成する。これら183症例の完全グラフの集合を、がん遺伝子パネル検査全体のSVグラフとして定義した。この時、SVグラフのEdge各々は、2つの遺伝子のバリアントが検出された症例と対応する。次に、Cytoscapeを利用して、SVグラフ描画および各Nodeの中心性を導出した。【結果】グラフから導出される中心性には様々な指標があるが、多くの症例で検出される遺伝子どうしの関わりを表す指標の一つとして「eigenvector centrality(固有ベクトル中心性)」に着目した。この中心性の値の上位には「TP53・MLL2・NOTCH1・APC・KRAS・ARID1A」があり、いずれもシグナル伝達、エピジェネティクス、細胞周期・分化のコントロールなどに重要な遺伝子であった。【課題】がん組織で検出されたバリアント情報からグラフを作成し、中心性に着目することで、全体の中で特徴的な遺伝子を抽出した。今後は、例えばKEGG DISEASE Databaseの情報をグラフにアノテーションを行ったり、二次的所見に関する遺伝子群がグラフの中でどのような特徴をもって現れるのか、など検討を続け、グラフによるがんゲノム医療の結果解釈に繋げたいと考えている。