講演情報

[P3-2]マイクロアレイ染色体検査の結果解釈の補助ソフトウェアツール(CAS)の開発

鈴木 寿人1, 中藤 大輔1, 山田 茉未子1, 武内 俊樹2, 小崎 健次郎1 (1.慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター, 2.慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)
【背景】
マイクロアレイ染色体検査は先天異常症候群を疑う患者に対して行う検査であり、出力される結果に対して病原性の有無の解釈する必要がある。解釈を容易にするため、検出された欠失が既知のコピー数多型が起因となる症候群(DecipherのCNV syndromes)やハプロ不全によって症状を呈すると予測される遺伝子とオーバーラップするか判定する補助ソフトウェアツール(CAS)を開発した。Ver2.0では健常者集団に対する全ゲノムシーケンスやSNPアレイの公開データベースを参照し、健常者で見られるコピー数多型を除外するフィルタを導入した。
【方法】
マイクロアレイ染色体検査で専門医が解釈を行い、病的な欠失がありと判断した陽性者50名、有意な結果がなかった陰性者50名を選出し、CAS ver2.0を用いた解析を行った。CNV syndromesのうちrecurrent microdeletionとされるものは、症候群のコアとなる遺伝子の有無でその病原性を判断した。
【結果】
陽性者50名のうち、専門医により原因であると判断されたすべての欠失を検出することができたことを確認した(感度100%)。陰性者50名のうち、46名は病的なCNVはないと判断された(感度92%)。偽陽性であった4名のうち、2名は欠失のThresholdが不十分で判定困難としていたものであった。残り2名はハプロ不全による発症は未確立であるものの、機能亢進型バリアントによる発症として確立していた遺伝子を検出したものであった。
【考察】
CASによる判定の感度は非常に高かった。CASはマイクロアレイ染色体検査の結果解釈を容易にするものの、検出された症候群あるいは遺伝子に対しての個別検証は必須である。入力したデータのThresholdが十分かどうか、検出された症候群のコアとなる遺伝子が含まれているか、検出された遺伝子は機能喪失による疾患発症が確立されているか検討を要する。
CASはhttps://cmg.med.keio.ac.jp/arraryclassified/より入手可能である。