講演情報

[P31-1]がんゲノム医療に関するがん患者の態度と普及に向けた情報提供のあり方の検討

永井 亜貴子1, 中田 はる佳2, 高島 響子3, 吉田 幸恵4,5 (1.東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 公共政策研究分野, 2.国立がん研究センター がん対策研究所 生命倫理・医事法研究部, 3.国立国際医療研究センター 臨床研究センター 臨床研究統括部 生命倫理研究室, 4.兵庫医科大学 看護学部, 5.立命館大学 生存学研究所)
【目的】がん患者におけるがんゲノム医療の認知度や情報源、がんゲノム医療に対してどのようなベネフィットや懸念を感じているか等の態度を明らかにし、今後のがんゲノム医療の情報提供のあり方について検討することを目的とする。
【方法】2021年12月に、がん患者を対象にオンラインのフォーカスグループインタビュー調査を実施した。対象者は、調査会社の登録者からがん既往歴がある者を対象にスクリーニング調査を実施し、属性、がんの部位・ステージ・治療状況をもとに16名を抽出し、4グループ(男女×20-49歳・50-69歳)に分けた。対象者には調査前に国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(C-CAT)が公開しているがんゲノム医療の解説動画を視聴するよう依頼した。
【結果】本調査の前からがんゲノム医療を知っていた者は9人(56.3%)であり、その情報源は、テレビ、インターネット、病院、患者会等で、望ましい提供方法として病院でのポスターやQRコード掲示があげられた。がんゲノム医療により個人にあった治療、個別化が進むことを肯定的に捉える発言は特に若年グループで見られた。また、データの2次利用については、希少がんやAYA世代であるという認識を持つ者において、データ提供や2次利用への肯定的な発言が見られた一方で、個人情報の取り扱い・漏洩を懸念する発言が3グループで見られ、遺伝情報による差別を懸念する発言は1グループで見られた。
【考察】がん患者のがんゲノム医療の認知度は、2017年に市民を対象として実施した調査と同程度であること、病院での情報提供が望まれていることが明らかとなり、医療機関を通じた患者向けの情報提供の強化が必要と考えられる。データの2次利用に関して、特に個人情報の取り扱いや漏洩が懸念されており、2次利用の意義や提供状況に関する積極的な情報提供を行い、透明性と信頼性の向上を図る必要があると考えられる。