講演情報

[P4-6]国立国際医療研究センターバイオバンクにおける精神疾患と肝疾患の関係に関する調査

杉山 真也, 平山 眞美, 森 佳代, 考藤 達哉 (国立国際医療研究センター 国府台病院 バイオバンク)
【目的】 当院でバイオバンクの同意説明をする中で、精神疾患を持つヒトに肝疾患を併発していることが散見された。バイオバンク検体の研究利活用を推進する上での基礎データともなるため、精神疾患と肝疾患の罹患状況について調査を行った。【方法】当院バイオバンクで2014年11月から2021年12月までの間で、ICD10分類で肝疾患と精神疾患の両方を罹患していた患者203名を抽出し、その内訳を調査した。【成績】精神疾患に罹患した後に肝疾患を発症した患者110名(年齢中央値54歳、女65名)の精神疾患の割合は、うつ病24.5%、統合失調症17.3%、不眠症16.4%の順で罹患率が多かった(重複あり)。これらの患者が、その後罹患した肝疾患は、脂肪性肝炎29.1%、C型肝炎27.3%、アルコール性肝炎11.8%の順で多かった(重複あり)。一方で、肝疾患を罹患した後に精神疾患を発症した患者93名(年齢中央値51歳、女57名)での肝疾患の割合は、C型慢性肝炎55.9%、脂肪性肝炎18.3%、肝がん17.2%の順で罹患率が多かった(重複あり)。これらの患者が、その後罹患した精神疾患は、不眠症37.6%、うつ病32.3%、認知症16.1%の順で多かった(重複あり)。【結論】 精神疾患を先に罹患した患者では、脂肪性肝炎やアルコール性肝炎といった過剰な飲食に起因すると考えられる肝疾患が多く、薬物乱用が原因となるC型肝炎の罹患という特徴が認められた。肝疾患を先に罹患した患者では、先に精神疾患を罹患した患者と比較して、特に認知症が多い傾向にあった。ただし、今回の両集団の年齢差がなかったため、この肝疾患を先に罹患した患者集団に特徴的な傾向と考えられた。このようにして、バイオバンク検体の特徴を調査、公開していくことで、バイオバンク検体の研究への利活用が進むことを期待する。