講演情報
[P5-2]筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群(mcEDS)疾患モデルマウスを用いた骨病態解明への取り組み
○高橋 有希1, 吉沢 隆浩2, 水本 秀二3, 山田 修平3, 古庄 知己1,4,5,6 (1.信州大学 医学部 遺伝医学教室, 2.信州大学 基盤研究支援センター 動物実験支援部門, 3.名城大学 薬学部 病態生化学研究室, 4.信州大学 医学部附属病院 遺伝子医療研究センター, 5.信州大学 基盤研究支援センター, 6.信州大学 医学部 クリニカル・シークエンス学講座)
筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群 (musculocontractural Ehlers-Danlos syndrome;mcEDS) はCHST14またはDSEの病的バリアントに基づく全身性のデルマタン硫酸欠乏により発症する。患者では骨・関節の変形・弛緩・脱臼、皮膚脆弱性、巨大皮下血腫等の症状が認められる。特に骨・関節病変は運動機能障害による患者のQOL低下の主因であり、その発症機序の解明は急務である。mcEDSの疾患モデル動物としてChst14ホモ欠損マウス (Chst14-/-) の解析が進められているが、現在のところ骨の表現型に関する報告はない。本研究ではmcEDSの骨病変の発症機序の解明を目的にChst14-/-を用いた骨の病態解析を行っている。本演題では脊椎変形の経時変化、骨密度と骨強度の12週齢と1歳齢との比較、骨形態計測、骨微細構造の観察について報告する。脊椎変形について野生型とChst14-/-それぞれ8週齢から52週齢まで経時的に後彎Cobb角を計測し、8週齢との比較を行った結果、野生型では期間を通して有意差が認められなかったのに対し、Chst14-/-では44、52週齢で増大が認められた。大腿骨海綿骨密度は野生型とChst14-/-ともに1歳齢で有意に低下していた。12週齢の海綿骨骨形態計測では、Chst14-/-で骨面、骨梁数の有意な低下が認められた。大腿骨3点曲げ試験による皮質骨強度の評価では野生型と比較し12週齢で剛性が低下していたが、1歳齢では最大荷重・破断変位・エネルギーが有意に低下していた。Chst14-/-では12週齢よりも1歳齢で破断変位と破断エネルギーが有意に低下していた。1歳齢の大腿骨皮質骨の微細構造観察では、Chst14-/-でコラーゲン細線維の会合不全が認められた。以上の結果から、Chst14-/-では海綿骨及び皮質骨における骨量・骨質の変化により骨脆弱性が引き起こされることでmcEDS患者同様の進行性の骨変形が生じることが示唆された。