講演情報
[P8-2]ロングリード・シークエンスにより複雑染色体構造異常が明らかになった均衡型転座t(5;15)(q14;q26.2)の1例
○田村 豪良1,2,3, 山本 圭子2,4, 谷ヶ崎 博3, 菅野 仁2,4, 山本 俊至1,4 (1.東京女子医科大学 大学院医学研究科 先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野, 2.東京女子医科大学 輸血細胞プロセシング科, 3.日本大学 医学部 小児科学系小児科学分野, 4.東京女子医科大学 ゲノム診療科)
【背景】精神発達障害の遺伝学的な原因精査において, マイクロアレイは第一選択として活用されており疾患原因と考えられる遺伝子が判明することがある. しかし, コピー数に変化のない染色体構造異常は検出することができない. 生下時より重度の精神運動発達遅滞を来し, G-band法やマイクロアレイでde novo均衡型転座t(5;15)(q14;q26.2)が認められた症例に対し, 転座切断点を同定するためロングリード解析を試みた. 【方法】患者は1歳6か月男児, 生下時より重度の精神運動発達遅滞を呈し, 寝返りや座位, 発語も未だ認められない. 他者に関心がなく生後初期より追視やアイコンタクトが認められない. 頭部MRIでは側脳室の拡大や小脳低形成を認めていた. ロングリード・シークエンスによる全ゲノム解析を行い, 得られた配列データを参照配列(GRCh37/hg19)にannotationし, Integrative Genomics Viewerを用いて解析し転座切断点を同定した. UCSC genome browserを参照して断端部にPrimerを設計し, サンガー法で塩基配列を確認した. 本研究は学内倫理委員会の承認の元, インフォームドコンセントを得て行った. 【結果】5q14.3欠失症候群の原因となるMEF2C遺伝子の約2.5-Mb下流にマイクロアレイでは同定し得なかった非常に微細な欠失や重複を伴った構造異常が明らかになった. 疾患の原因として報告されている遺伝子に切断や欠失はないため, MEF2Cの関与が考えられた. 【結論】本研究により, 一見均衡型とみられる転座であっても, 切断点に複雑な構造異常を伴っている可能性があることが明らかになった. このような症例の場合, ロングリード・シークエンスによる全ゲノム解析が有用であることも示唆された.