講演情報

[PL]Human genetics for unborn patients: My back to basics

左合 治彦 (国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター,遺伝診療センター)
近年,遺伝医学は飛躍的な発展を遂げ,幅広い医療分野に大きな影響を及ぼし,目覚ましい進歩を遂げている.大きな恩恵をもたらしている一方で,あまりに進歩の早いゲノム科学の潮流にのまれ,研究や医療の原点や本質が見失われそうで,本大会のテーマを「Back to Basics!」とした.ゲノム科学,人類遺伝学における研究や医療の原点に返り,その本質をもう一度深く考える契機となる大会にしたいという意図からである.
 私は留学中の1997年,米国のBar Harborで毎年行われる遺伝学のショートコースの冒頭の講義で,McKusick先生からHuman geneticsとはThe science of biological variation in humansというのを聞いて深い感銘を受けた.まだ多様性という言葉をあまり聞かない時代であり新鮮でもあった.UCSFでのダウン症のマウスモデルの研究もなんとか軌道に乗ったところで,Human geneticsに学の拠り所を見い出した.
 帰国後は基礎研究から次第に離れ,周産期医療に従事し,臨床研究を行ってきた.主に胎児を対象とした診断と治療に関する研究である.種々の疾患に対する遺伝学的検査が胎児にも用いられることが可能になってきたが,胎児期の遺伝子発現と病態の関連など胎児に関するゲノム医学の知見は乏しい.Human genetics for unborn patientsとして認知され発展することが期待されている.
本講演ではHuman geneticsとの関わりを通じて私の「Back to Basics!」のプロセスをお話したい.みなさん自身のHuman geneticsとの関わりや「Back to Basics!」を考える一助になれば幸いである.Human geneticsがみなさんの臨床や研究の拠り所となっていることを認識されるに違いない.