講演情報
[S1-3]自然免疫応答の単一細胞分解能での遺伝的多様性の解析
○熊坂 夏彦 (国立研究開発法人国立成育医療研究センター エコチル調査研究部)
感染症や自己免疫疾患のゲノムワイド関連解析(GWAS)において同定された感受性遺伝子座の一部は,細胞の免疫応答の遺伝的多様性に関連していることが示唆されている.本研究では,細胞の異なる環境下における遺伝子発現の遺伝的多様性を解析するGASPACHO (GAuSsian Processes for Association mapping leveraging Cell HeterOgeneity)という新たな統計手法を提案し,自然免疫応答下にある2万以上の線維芽細胞の遺伝子発現を解析した.その結果,ゲノムワイドに数千箇所の応答発現量的形質座位(reQTL)を同定し,その3割が免疫に関係するGWASで同定された感受性座位との間に共局在化を認めた(事後確率50%以上).一例として,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が認められたOAS座位のファインマッピングを行い,OAS1遺伝子のスプライシング変異がCOVID-19のリスクを上昇させていることを突き止めた.また実際にCOVID-19に罹患した患者から採取された鼻粘膜上皮細胞と末梢血単核細胞の単一細胞RNA解析による追加検証を行った結果についても紹介する.