講演情報
[S11-1]ゲノム情報利活用の規制に関する課題と展望
○米村 滋人 (東京大学 大学院法学政治学研究科)
今日では、以前にも増してゲノム情報の利活用の必要性・有用性が強調されており、適切な利活用を実現するためにも、一定の規制ないし規制緩和が重要な課題となっている。ところが、日本ではゲノムに関する特別立法はなく、個人情報保護法と研究倫理指針による断片的な規制が行われる状況が続いてきた。本講演では、ゲノム情報の利活用に関して、現在の法令・指針における運用状況と今後検討すべき具体的課題につき概説する。
ゲノム情報も個人情報の一環として個人情報保護法令の適用を受ける。個人情報保護法令に関しては、令和3年改正により、法人属性により規制法令が異なる、いわゆる「2000個問題」が解決され、また学術目的利用につき大幅な規制緩和がされたため、医療情報の利活用に関して一定の進展があった。しかし、この法改正では一般医療機関や民間企業の利活用は規制緩和の対象ではなく、またゲノム特有の問題状況にも配慮されていない点で、未だ多くの課題が残されている。
従来、ゲノム研究に対してはいわゆるゲノム指針を中心とする指針規制が実施されてきたが、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に統合された後はゲノムに特化したルールはほとんどなくなり、またそもそも、同指針は学術研究にしか適用されないため、産学を包括する利活用ルールを展開させることは困難である。
以上の状況を踏まえると、ゲノム情報の利活用のためには、新規にゲノムに特化した法令または指針を定める必要があると考えられる。具体的にどのような規制が必要となるかについては、今後5年程度の期間内に想定されうるゲノム情報利活用とゲノム医療の進展の全体像を踏まえつつ、必要な論点を抽出し検討を進める必要があると考えられる。
ゲノム情報も個人情報の一環として個人情報保護法令の適用を受ける。個人情報保護法令に関しては、令和3年改正により、法人属性により規制法令が異なる、いわゆる「2000個問題」が解決され、また学術目的利用につき大幅な規制緩和がされたため、医療情報の利活用に関して一定の進展があった。しかし、この法改正では一般医療機関や民間企業の利活用は規制緩和の対象ではなく、またゲノム特有の問題状況にも配慮されていない点で、未だ多くの課題が残されている。
従来、ゲノム研究に対してはいわゆるゲノム指針を中心とする指針規制が実施されてきたが、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に統合された後はゲノムに特化したルールはほとんどなくなり、またそもそも、同指針は学術研究にしか適用されないため、産学を包括する利活用ルールを展開させることは困難である。
以上の状況を踏まえると、ゲノム情報の利活用のためには、新規にゲノムに特化した法令または指針を定める必要があると考えられる。具体的にどのような規制が必要となるかについては、今後5年程度の期間内に想定されうるゲノム情報利活用とゲノム医療の進展の全体像を踏まえつつ、必要な論点を抽出し検討を進める必要があると考えられる。