講演情報
[S11-4]インフォームド・コンセントと産学でのデータ利活用
○武藤 香織 (東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 公共政策研究分野)
近年、健康や医療に関する個人情報を仮名化して企業と共有することについて、政治的・社会的要請が強まっている。特に、企業による非学術研究目的でのデータ利用の円滑化が求められている。国が主導するがんと難病の全ゲノム解析等実行計画では、研究者やバイオバンク等が収集済みの試料・情報を企業が単独で利用できる環境づくりが強く要請された。しかし、研究者側においては、不特定多数の企業のための二次利用に関する同意取得をサービスとして請け負う伝統はなく、明示的に同意を取得した既存試料・情報は少なかった。今後は、患者や研究対象者から企業単独による個人情報利用に関する同意の取得が、研究助成機関からも強く求められるだろう。
さらに、個人情報を外国にある者への提供に際して「適切な同意」を取得するにあたり、個人情報保護法及び研究倫理指針は、1)当該外国の名称(特定できない場合はその旨及び理由)、2)適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度に関する情報、3)当該者が講ずる個人情報の保護のための措置に関する情報(情報提供できない旨及びその理由)を説明することを求めている。
報告者の懸念は、個人情報の説明事項が上乗せされることで、研究や診療におけるインフォームド・コンセントの質が低下することである。患者や研究対象者は、治療の選択や研究への参加などの重要な意思決定をする場において、個人情報の利用に関する企業による利用状況の意思確認を求められる。また、本学会が育成するGMRCをはじめ、説明者にとって、見知らぬ企業による将来の利用について、わかりやすく熱意をもって説明する動機づけがなく、さらにそれを無償のサービスとして担わせるのは限界がある。
医療機関・研究機関と企業との間で円滑な個人情報の共有は重要だが、「適切な同意」をインフォームド・コンセントに浸食させない方法を考える必要がある。
さらに、個人情報を外国にある者への提供に際して「適切な同意」を取得するにあたり、個人情報保護法及び研究倫理指針は、1)当該外国の名称(特定できない場合はその旨及び理由)、2)適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度に関する情報、3)当該者が講ずる個人情報の保護のための措置に関する情報(情報提供できない旨及びその理由)を説明することを求めている。
報告者の懸念は、個人情報の説明事項が上乗せされることで、研究や診療におけるインフォームド・コンセントの質が低下することである。患者や研究対象者は、治療の選択や研究への参加などの重要な意思決定をする場において、個人情報の利用に関する企業による利用状況の意思確認を求められる。また、本学会が育成するGMRCをはじめ、説明者にとって、見知らぬ企業による将来の利用について、わかりやすく熱意をもって説明する動機づけがなく、さらにそれを無償のサービスとして担わせるのは限界がある。
医療機関・研究機関と企業との間で円滑な個人情報の共有は重要だが、「適切な同意」をインフォームド・コンセントに浸食させない方法を考える必要がある。